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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

今年の入試から何を読み取るか(3) 常識問題に変化が

第465号 2014/12/26(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 最近の入試問題の傾向の一つに、「常識問題」が増えていることがあげられます。常識問題と言えば、理科的常識を筆頭に社会的常識や昔話などがあります。小学校の教科も、低学年では理科や社会が消えて「生活科」になっていますが、そうした内容につながっていく問題です。典型的な季節の問題にしても、従来は春夏秋冬の4つのシーズンが区別できればほとんど問題なく解けましたが、最近は、どうも同じ季節の中でも月による順序を問う問題も出始めています。また、季節の行事で良く出る「お餅」について、どの行事でいただくお餅なのかを問う問題も出ています。こうなると図鑑的な知識ではなく、自分自身の経験を絡ませないとわかりにくい問題ということになります。例えば今年出された次のような問題はその典型です。

常識 (2015年度入試より)
  • 1番上のお部屋を見てください。この中で飛べないものにをつけてください。
  • 上から2番目のお部屋を見てください。今の季節は秋です。これから咲く順番で考えると、4番目に咲く花にをつけてください。
  • 下から2番目のお部屋を見てください。今の季節は秋です。これから来る楽しい日の中で、3番目に来るものにをつけてください。
  • 1番下のお部屋を見てください。ここに、ある昔話に出てくるものがかいてあります。その中で仲間はずれはどれですか。をつけてください。

入試の時点で季節は秋ですから、これから来る冬から始めて「4番目に咲く花」や、「3番目に来る楽しい日」を探すということは、単に冬・春・夏・秋の括りの理解ではなく、その季節の中における順序、つまり「何月か」が問題になってきます。こうなると、いわゆる知識で解く問題ではなく、経験を踏まえて考える問題だということになるでしょう。

また、次の問題も経験を踏まえないと難しい問題です。

社会的常識 (2015年度入試より)
女の子が温かい気持ちになるものに、青いをつけてください。

実はこの問題には伏線があり、その前の「話の内容理解」の問題で、お話の最後が「・・・大きな木は、『ぼくは一人ぼっちなんかではないんだ』と思いました。大きな木には友だちがいて、いつもみんなの役に立てていることを思い出すと、大きな木は、温かい気持ちになりました。」となっています。この次のペーパーが上記の問題です。「温かい気持ちになる」ということに関し「みんなに役立てていることを思い出すと・・・」とあり、その流れで、「女の子が温かい気持ちになるものに」という問題に発展していくのです。「温かい気持ち」・・・そこがしっかり聞けているかどうかがポイントです。この問題では、右下のサンタクロースが女の子にプレゼントをあげている場面の扱いをどうするかで、子どもたちは迷ったことでしょう。「女の子がうれしい気持ちになる」ことと、「温かい気持ちになる」ことの区別がつけられたかどうか。自分自身の経験を通して初めて理解できる問題だったと思います。

常識問題は、「知っているか - いないか」によって、得点できるかどうかが決まります。しかし、経験を媒介しない知識では、今年出されたような問題への対応は多分難しかったのではないかと思います。なぜこうした問題を各学校とも好んで出すのでしょうか。それは、年齢にふさわしい経験を日常的に積んでいるかどうかを、常識問題を通してみているからにほかなりません。その意味で、家庭教育のあり方が問われているのです。知識の教え込みで解こうとしたら、壁にぶつかることは目に見えています。これから入試までの時間を有意義に使うためにも、入試で問われる常識問題を念頭に置き、実際の経験をたくさん積んでいただきたいと思います。

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