ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

「幼稚園から義務教育」報道に接して

第42号 2006/01/19(Thu)
こぐま会代表  久野 泰可

 1月1日の読売新聞は、トップ記事として幼稚園の義務教育化についての政府・与党の方針を伝えています。それによると、「小中学校の9年間と定められている義務教育に幼稚園などの幼児教育を加え、期間を10~11年間程度にする方針を固め、2009年度以降の義務教育延長の実現を目指す」としています。
 報道によれば、幼稚園―小学校の区分による環境の変化が学力のばらつきを招いているため、幼稚園を義務教育に含め、一貫した学習体系を構築するのが狙いのようです。その中で、今問題になっている「小一プロブレム」の解決や、少子化対策の強化を図っていくようです。昨今の学力低下問題に端を発した教育問題が、義務教育の延長という国家戦略にまで発展し,これから当分の間,こうした問題が国民的議論に発展していくのではないかと思われます。

 私はこの報道に接し、私たちがこれまで主張してきた「幼小一貫教育」問題が本格的に議論される時代になってきたということで、大変うれしくも思い、また期待もしたいと思っています。しかし、一方で、こうした改革をする前提として、なぜ既存の幼稚園や保育園の教育内容や方法を見直すこともせず、いきなりの制度改革なのかという疑問が残ります。そのことは、政府・与党が考えている、幼稚園の義務教育化や幼小一貫校の創設の中で、いったいどんな教育内容を考えているのかという問題につながっていくのです。私は、教育内容の議論がないままの制度上の改革に終わるのではないかと心配しています。

 つまり、教育特区を使って就学年齢の一年引き下げを検討しているある自治体が考えているように、小学校1年生の学習内容をそのまま一年引き下げたらどうかという暴論がまかり通っていくことになりはしないかと懸念しているのです。

 本当に幼稚園―小学校の一貫した学習体系を構築するのが狙いであるのなら、なぜ、幼稚園や保育園の教育内容の改善から手をつけなかったのか。こうした体質が変われなければ、制度上の改革が進んでも、何も解決しません。幼小一貫の掛け声はいいけれど、どんな内容をどんな方法で教育するのかの具体案がなければ、また新たな矛盾を抱え込むことになります。

 今、こぐま会は、韓国のある教育機関と連携して、2007年度から韓国で始まる幼稚園の義務教育化に対応する学習プログラムを開発し、今年3月から試験的に導入する準備を進めています。私たちがこれまで実践を通して作り上げてきた「教科前基礎教育」の内容と方法が評価されてきたことを、大変光栄に思っています。

PAGE TOP