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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

交換の問題に見られる子どもの理解度の現状と対策

第403号 2013/9/6(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 夏の学習で、子どもたちが必死に取り組んだ課題の一つが「交換」の問題だったと思います。これは、最近の入試において毎年複数校で出されている、典型的な新傾向の問題です。物と物を交換する条件の中にかけ算の考え方が求められ、問題によっては逆から問いかけるために、わり算の考え方の一つである包含除の考え方が求められています。この問題は、10年以上前から入試で出されていますが、問題が進化し、今では数の領域の中では一番難しい問題として子どもたちを悩ませています。ではどのように進化してきたか、実際の問題を見てみましょう。

1. 2005年度入試 雙葉小学校
ポンタ君とポンコちゃんとポンキチ君は、葉っぱを持ってお買物に行きました。
  • 大きい葉っぱ1枚は、木の実3個と換えることができます。
  • 小さい葉っぱ1枚は、木の実1個と換えることができます。

【問題】
  • ポンコちゃんは、大きい葉っぱ1枚と小さい葉っぱ2枚を持っています。木の実何個と取り換えることができますか。
  • ポンタ君は、木の実を7個持っています。どの葉っぱの組み合わせで取り換えることができますか。葉っぱのかいてあるお部屋にをつけてください。
  • ポンキチ君は、大きい葉っぱ2枚と小さい葉っぱ3枚を、木の実に取り換えたのですが、食いしん坊のリスさんに何個か食べられてしまい、5個しか残っていません。リスさんは何個食べましたか。
2. 2008年度入試 雙葉小学校
動物村のパン屋さんは次のようにパンを取り替えてくれます。
  • メロンパン1個はドーナツ2個と換えてもらえます。
  • 食パン1斤はメロンパン2個と換えてもらえます。
  • ハンバーガー1個は、メロンパン1個とドーナツ1個と換えてもらえます。
【問題】
  • ドーナツ4個は、メロンパン何個と換えてもらえますか。
  • 食パン2斤は、ドーナツ何個と換えてもらえますか。
  • ハンバーガー4個は、食パン何斤と換えてもらえますか。

3. 2010年度入試 聖心女子学院初等科
大きいジャガイモや小さいジャガイモが袋に入っています。

【問題】
  • 左のお部屋を見てください。
    大きいジャガイモ1個は、小さいジャガイモ3個と同じ重さです。この中で1番重い袋に青いをつけてください。
  • 右のお部屋を見てください。
    右の袋を、左のジャガイモの入った袋と同じ重さにするには、小さいジャガイモがあといくつ必要でしょうか。袋の中にその数だけ青いをかいてください。

4. 2012年度入試 聖心女子学院初等科
左側の絵を見てください。
絵本1冊と、鉛筆2本、消しゴム4個は、同じ値段です。
花子さんは絵本を2冊買いました。

【問題】
  • 絵本2冊と同じ値段で買えるものが入っているカバンを、下から探して青いをつけてください。

中でも一番難しいのは、2.のハンバーガーの問題だと思います。この夏休み、それに類した問題に相当取り組んだと思いますし、ここにきてこのハンバーガーに代表される、「1種類のものと2種類のものが交換できる」という約束の問題もだいぶ解決できるようになりました。しかし、まだ3割の子がてこずっている状況です。では何を解決すれば前に進むのか・・・壁になっている問題を一歩でも乗り越える努力をすることの中で、あいまいな理解だった点が解決できていくのです。こうした難しい問題に挑戦することを通して、「交換」問題の解決に必要とされるものの見方をトレーニングできるという意味で、ハンバーガーの問題は大変良い問題だと思います。

ところで、この夏に行った新傾向の問題講座の中でも、「交換」をテーマとした学習を行いました。その学習を通して見えてきた子どもの理解の現状と、解決に至る道筋をどうつけるかを、少し整理してみました。

(1) まず前提として、一対多対応の考え方がしっかり身についているかどうかを点検する
(2) AからBを聞いても、BからAを聞いても答えられるようにする。例えば、
A=2Bの時、3A=? 8B=? の両方ができるようにすること
(3) A=B B=Cの関係から、Bを仲立ちとしてAとCの関係を考えられるかどうか。この関係においても、AからCだけでなくCからAも答えられるようにする
(4) 2A=4Bの時、A=2Bであることがわかるかどうか。この関係を理解しないと解けない問題が多くなっている。最初に紹介した、絵本2冊と同じ値段のものを探す問題は、まさしくその考え方が必要となる
(5) 1種類のものと2種類のものとを交換する問題が難しいが、2回以上置き換えをしなければならない点が大変難しい(上記、ハンバーガーの問題)
(6) 置き換えを2回以上しなくてはならない場合のポイントは、「何に変わったのか」をしっかり把握できるかどうかが決め手になる

私自身も、この夏徹底して「交換」に関する子どもの誤答分析をしました。その結果、以上のような事が判明しました。この現状を踏まえ、これをどう解決していくかを具体的なカリキュラムや教材で示してあげれば、子どもたちも無理なく理解していけるはずです。特に、(6)の「何に変わったのか」を見る眼を育てることが、置き換えを伴う交換の問題を解く最大のカギだと思います。置き換えを1回すればそれですべて解決できたと思ってしまう子どもの考え方を鍛え直さないと、ハンバーガーの問題は解けないと思います。


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