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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

年中からの正しい受験法

第387号 2013/5/10(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 4月21日から始まった「女子校合格フェア」の一環として、来年秋以降に受験する年中児以下の保護者を対象としたセミナーを、5月4日に行いました。これから受験準備を始めようとする方々に、小学校受験をめぐる現在の状況を伝え、これから1年半以上かけて行う受験対策の取り組み方についてお伝えしました。

年中から始める小学校受験対策
合格をめざす「正しい受験法」
(A) 入試の現状と課題
1. 今、何が問題になっているのか
2. どんな能力が求められているか
3. 入試問題の変遷と、現在の入試の傾向

(B) 間違った受験対策はなぜ起こるのか
1. 情報が開示されていない
2. 業者側の思惑による情報操作・噂話の流布
3. 幼児教育の専門家でないものが、簡単に参入できる小学校受験塾
4. 子どもの発達・理解の道筋・学校側の出題意図が分析できない素人集団
5. 結果を急ぐ母親・ペーパー主義の横行
6. 公開模試で出される、根拠のない難問

(C) 学校は訓練された子どもは求めていない
1. 子育ての総決算としての入試
2. 行動観察で自由遊びが重視される背景
3. 訓練ではレディネスになりえない
4. 訓練によって、自由な発想・柔軟な思考力は育たない
5. 慶應義塾横浜初等部からのメッセージ

(D) まともな幼児教育こそ、合格への近道
1. 子どもの理解度に合わせた学習計画
2. 学びの系統性を踏まえた学習
3. 方法としての事物教育
4. 具体から抽象への授業方法
5. 考える力を育てるには、物事への働きかけや試行錯誤の時間が必要

(E) 事物教育とラセン型系統学習の実践
1. こぐま会セブンステップスカリキュラム
2. 教科前基礎教育・事物教育・対話教育の実践
3. 合格カレンダーによる保護者への情報開示

今、学校側が一番苦労しているのは、「合格」を出しても辞退されてしまい、定員割れのまま4月新学期をスタートさせなければならないという現実です。その現実に学校側がどのような対策を講じているか・・・そして、その結果として、入試の方法や合格者の発表の仕方、面接試験の取り組み方がいろいろ変化している実態を伝えました。2008年度をピークに、私立小学校への受験者が減少していること、「合格」を出しても辞退される現実を踏まえ、誰が第一志望で、誰が併願なのかをどのように見抜くのかについて苦労していること・・・そうしたことが、補欠合格者の発表の仕方にまで影響を及ぼしている現実を伝えました。

一方、実際のテストは、「学力試験」「行動観察」「面接」の3つの柱で行われ、実力主義といえども、単に学力があるからと言って合格できない今の入試の現状と、ペーパー試験で課せられる内容が以前と違って「考える力」が求められている現実を伝えました。雙葉小学校の「交換」の問題を実際に解いてもらい、学校側の意図と、どこで子どもが解らなくなるか、そのために、どんなトレーニングを積めば良いかなどを解説しました。

また、出題される問題がどのような変遷をたどって今日に至っているのかも具体的に伝えました。知能検査の問題で入試を行っていた時代、20~30枚のペーパーを使って入試を行っていた時代、一切ペーパー問題を出さず、具体物やカードを使って入試を行っていた時代・・・そして、7枚前後のペーパーと行動観察・面接試験で合否が決まる今の入試・・・・その変遷の過程は、小学校入試が一般化していく過程で起こってきたさまざまな問題を、学校側が工夫して乗り切ってきた、その軌跡の表れだと言っても過言ではありません。特に最近の誤った風潮である「受験対策は何枚ペーパーをこなしたか」だと勘違いしている皆さんに対し、一枚一枚のペーパー問題に込められた学校側のメッセージを読み取らないと、とんでもない対策を行ってしまうことになるということを、具体例を示して警告しました。「考える力」を育成するには、事物教育と対話教育が必要です。ペーパー学習に至るまでに、体を使った経験、具体物やカードを使って試行錯誤させる経験、その上で、ペーパーを使ったトレーニング・・・この3段階の学習によって、まともな受験対策ができることをお伝えしました。

ペーパーだけを使った準備教育は、「考える力」を育てる教育にとって、好ましいやり方ではありません。受験教育といえども、そのやり方については原則があります。子どもがものごとを理解する道筋や、学ぶ内容の順序性を無視してできるものではありません。今行われている準備教育の多くが、そうした教育の原理を無視し、ペーパーによる詰め込み教育であることが問題なのです。その結果、勉強嫌いな子どもを大勢小学校に送り込むことになっているのです。幼児期は、大事な人間形成期でもあるということを踏まえても、好ましいことではありません。「合格」と引き換えに大事なものを失ってしまう、「間違った受験対策」にならないよう、保護者の皆さんの責任は重大です。

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