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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

幼小一貫教育の実現を

2005/09/01(Thu)
こぐま会代表  久野 泰可

 文部科学省は、8月25日の定例記者会見で、小6・中3の2学年全員を対象とした『全国学力調査』を07年度から実施することを明らかにしました。『全国学力調査』は、50~60年代に実施されていましたが、学校・自治体間の競争をあおるという批判を受けて中断していました。その後、80年代以降は最大でも全体の9%の児童・生徒を抽出して行う『教育課程実施状況調査』を行ってきましたが、今回は全員参加のテストを考えているようです。私が教育学部の学生のころ、日本の教育史における『学テ闘争』について、学習した記憶があります。過度な競争の結果、平均点を上げるために、学力テストの日に成績の悪い子どもたちを意識的に休ませるなどという、あまりにも非教育的な措置を講じた県もあったということです。こうしたことが再び起こるのではないかという懸念から、全員参加のテストをやる必要はないと言う意見も、中央教育審議会の中にはあるようですが、果たしてどうなるのか。昨年11月に中山文科相が出した、教育改革私案の中で提唱した方針ですから、文部科学省も実施に向けて相当意欲を持っているようです。

 品川区における,小中一貫教育の実施や、今回の学力テストの実施等は、学力低下懸念や「ゆとり教育の見直し」の中で出されてきた、改革案だと思います。これからもいろいろな試みがなされて行くと思いますが、幼児期の基礎教育を30年以上現場で考え続けてきた者として、学力の低下現象を本当に憂慮しているのなら、どうして、「幼小一貫教育」の実現に向けた機運が盛り上がらないのか、残念というか不思議でなりません。基礎学力の育成にとって今一番必要なのは、小中一貫や中高一貫ではなく、幼小一貫教育なのです。教科学習に入る前の幼児期に、どのような経験や学習をさせ、それをどのように就学につなげていくのか。幼稚園と保育園の一元化のみならず、幼児期にすべき学習内容を明らかにし、それをスムーズに小学校の学習内容につなげて行く努力をしなければ、年少から年長までの貴重な3年間を、遊び保育中心で終えてしまうという結果になりかねません。今こそ、知育を敬遠してきた幼稚園や保育園の教育のあり方を全面的に見直し、教科学習の基礎をしっかり身につけ、小学校教育につなげていく必要があります。

 受験のための準備教育という特殊な環境にありながら、30年以上にわたって幼児期の基礎教育を『教科前基礎教育』としてとらえ、事物教育を中心に実践してきた「こぐま会の教育」は、受験対策のみならず、幼小一貫教育における幼児期の基礎教育の内容を具体的に提示できたと考えています.そして、率直な感想を言えば、幼児期の子どもたちには、予想以上に高いレベルの「論理教育」が可能だということです。今年初めて実施した年長向けの『論理的思考力育成講座』における子どもたちの反応を見て、私たちはそのことを強く確信しています。

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