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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

対話教育の実践

2005/08/04(Thu)
こぐま会代表  久野 泰可

夏休み講習会の授業の中で、子どもたちが一番集中して取り組む課題が「銀行ゲーム」です。これは、一対多対応を応用した「交換」の考え方を身につける以下のような内容です。
くまのコイン1枚でうさぎのコイン2枚と交換できる
うさぎのコイン1枚でかめのコイン3枚と交換できる
この約束をふまえ、いろいろな交換をする
このゲームに入る前に子どもたちにいろいろ質問します。「みんなお母さんと買い物に行ったことあるでしょう。どんなお店がありますか」と問うと、「八百屋」「パン屋」「薬屋」「魚屋」・・・中には「セブンイレブン」「ピーコック」といったお店の名前も登場します。そんな会話をした後で「みんな銀行行ったことあるでしょ。銀行は何を売っているの」
そうすると、一瞬静まり返り、ちょっと困ったような顔をします。少し経ち「お金」と言う子が出てくると「違うよ。お金を預けるんだよ」とか「お金を振り込むんだよ」とか・・・自分の経験をふまえて主張します。「そうだね。お母さんがお金を預けたり、振り込んだり、お金をカードで出したりするところだね」「じゃあ今日は、みんなに銀行のお姉さんの役をやってもらうからね。銀行のお姉さんはお金をしっかり数えられなくてはなれないから、がんばってね」とやる気を促します。

「くまのコイン3枚でうさぎのコイン何枚か。」「かめのコイン9枚でうさぎのコイン何枚か」など、基本の問題を練習した後、次のような質問をします。ある日太郎君が銀行にやってきて言いました。「すみませーん。くまのコイン1枚をかめのコインに変えてほしいんですけど・・・」すると子どもたちの中から「いいですよー」という声と「だめですよー」という声が聞こえてきます。
「だめですよー」といった子は「だって、くまとかめのコインを変える約束はしてないから・・・」と答えます。これを聞いたある子は「でもね。くまのコイン1枚をうさぎのコイン2枚に変えれば、かめのコインに変えられる」と主張します。少しの間「だめ」という子と「いい」という子が、ぶつぶつ言い合っているのを聞いた後、「じゃあ、いいですよといってくれた,希穂ちゃんに説明してもらうから聞いてね」。すると希穂ちゃんは、「最初に、くまのコインをうさぎのコインに変えるの。そうすると2枚でしょ。その2枚をかめのコインに変えると、3枚と3枚で6枚になるの。だから、かめのコイン6枚に変えてもらえるの」

変えてもらえないと主張していた子どもたちも、この説明に納得したようでした。あるものを仲立ちにして交換していく難しい課題も、こうした感覚の授業で少しずつ理解していってくれます。お金をしっかり数えないと銀行のお姉さんになれない・・・という思いが、一生懸命考えようとするきっかけなったのでしょう。私たちが実践している「対話教育」は、単に教師と子どもの間のやりとりだけでなく、子供同士が考え方をぶつけ合うことも大切にしたいと考えています。そうした活動が、年長児にもできるという事実を、もっと授業に活用すべきだと思います。

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