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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

幼児期の基礎教育と小学校受験

第146号 2008/04/11(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 こぐま会は、この4月で創立25周年を迎えます。教科前基礎教育の充実を図ることこそ小学校受験で合格を勝ち取る唯一の道だと確信し、何千人という子どもたちを私立・国立附属小学校に送り出してきました。私自身は、36年間教室での実践活動を通じて、幼児期における正しい知育の在り方を追究し、子どもたちから学んだことを生かしながら、セブンステップスカリキュラムや、教具・テキスト類を独自に開発してきました。

私が大学を卒業した同じ年に出版された「歩き始めの算数」の中で、数学者である遠山啓氏が訴えていた「原数学」「原国語」「原絵画」・・・といった教科前の基礎教育の具体的な中身を、授業を通して確立してきたのが、私自身の36年間の実践活動だったと言っても過言ではありません。幼児期の基礎教育と小学校受験をどう結び付けるか・・・当初は大変悩みました。それは、35年も前の小学校入試は、ほとんどが知能テストの問題であり、機械的なトレーニングで解決してしまった時期もあったからです。しかし、幸いにも、入試が大衆化する過程で学校側の考え方が変化し、私たちが考える「教科前基礎教育」の中身が、入試問題として取り上げられるようになりました。さらに最近では、私たちが当初から主張し続けてきた「論理的思考力」が、小学校入試でも問題になり始めてきています。

私たちが主張してきた「教科前基礎教育」の充実が、小学校入試でも大きな力を発揮することが実証され、私たちは何の葛藤もなく基礎教育の充実に全力を傾けることができるようになりました。そして「やさしすぎる」と批判を受けながら、決してゆがめることなく持続してきた「事物教育」を、今やほとんどの準備教育機関が受験対策の中心にすえている現実を見て、私たちの主張が正しかったことを確信しています。子どもたちにとって、入試のための準備教育が、実は将来の知的土台を作り上げる最大の動機づけになっているという事実を素直に喜びたいと思います。激化する準備教育が、子どもたちをダメにする教育になってしまわぬよう、当分の間監視していかなくてはなりませんが、少なくとも問題を出す学校側の考え方にぶれはありませんので、子どもに過度な負担を強いる過去の過ちを再び繰り返すことはないと信じています。

教科前基礎教育の充実は、「事物教育」「対話教育」「家庭との連携」の三本柱によって実現可能です。結果を早く求めようと焦る親の気持ちが一番良くありません。ペーパー主義に見られるような、教え込みの教育は幼児教育に一番なじまない方法です。各学校で出題された問題を冷静に分析すればわかることですが、「柔軟な思考力をどう育てるか」を入試対策の中心に据えるべきです。それが、日本の子どもたちの学力低下に歯止めをかけることにつながるのなら、「子育ての総決算としての入試」は、幼児教育としても大きな意味を持つことになると考えています。

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