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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

ペーパー学習の前にすべきこと

第135号 2008/01/18(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 新しい年を迎え、この秋受験される方にとっては入試まで残り10ヶ月足らずとなり、あせりを感じ始める時期になってきました。「何をどう学習したらよいのか」「家庭学習では理解しているつもりだったのに、テストで正解できなかった」「幼稚園のお友だちのAちゃんはかなり難しい問題に挑戦しているのに、うちの子はまだ易しい問題でつまずいている」・・・・・、さまざまな悩みを抱えながら、解決する見通しが立たないために、イライラがつのります。しかし、叱咤激励して解決するならこんなに易しいことはありません。幼児の場合、それぞれの子どものこれまでの体験や月例によって、一つの物事の理解に差が出るのは当然であるし、子どもの発達を無視して、無理やり難しいことをやるのが良いことだとはいえません。それぞれの子どもには発達の道筋があるわけですから、あせってやったところで、解決するはずはありません。まずは、子どもの成長を信じ、今何をやるのがその子にとって一番効果的かを考え、対処しなくてはなりません。他人と比べたり、現段階の理解度を無視して、難しいことに挑戦させるのは、逆効果を招きます。

これまで多くの子どもたちの受験対策に関わってきて感じることは、熱心なご家庭ほど学習方法を間違えると、やることすべてが逆効果になリ、合格につながらないことが多いということです。一番典型的なケースは、今の時期にもうすべての問題集をやり終えて、やるものがないというように、極端なペーパー主義の学習を行ってきたご家庭です。3歳ごろからあらゆるペーパーをやりこなしてきた結果だと思います。毎年、こうした方々から「最近ペーパーを含め学習意欲がなくなった」「これから入試まで何をしたらよいか」といったようなご相談があります。こうした場合、その子の学力を具体物を使って、一対一の個別テスト形式で点検してみると、半分以上の質問に答えられないのです。つまり、本当に理解していないのです。ですから、多くの場合夏以前に息切れして伸び悩み、合格につながっていかないのです。なぜでしょう。それは、ペーパーで丸がもらえれば、本当に分かったと周りの大人が勘違いしているからです。子どもは、解き方さえ教え込めば、ある程度の問題はやりこなしてしまいます。しかし、本当にわかってやっているのではなく、教えられた通りの解き方でやっているに過ぎません。ですから、質問の視点が変わったり、同じ趣旨の問題でもちょっと質問の形式が変わると解けないのです。本当に理解したということは、どんな問われ方をしても答えていけるということです。

ペーパーだけの学習がなぜ合格につながらないかは、はっきりしています。それは、今の入試問題は昔の知能テストと違って、パターン化した問題はほとんど出されないからです。数にしても図形にしても、今まで出されたことのない工夫された問題が毎年多く出されています。本当に理解しているのかどうかを、まったく新しい問題で見ようとしているわけです。また、ペーパーだけの学習は、今の入試問題の傾向にあわないというだけでなく、物事を本当に理解させる教育方法の原理にも反しています。子どもは、まず体で体験し、手を使った事物操作によって試行錯誤を繰り返し、その結果として物事の関係をつかみ、論理を形成していくのです。その上で行うペーパー学習であれば、効果は絶大なはずです。基本が出来れば、応用力はペーパーで相当高めることができるからです。

もう一度まとめましょう。ペーパー学習をする前にすべきことは、

  1. 体を使った事物体験
  2. 具体物や教具及びカードを使った事物操作
  3. 答えの根拠を説明させる「対話教育」

この手順を踏めば、かなり高度な「論理的思考力の育成」も幼児期に可能であることは、実証済みです。私たちの教室では、こうした考え方に基づいて、日々の教育に当たっていますが、年間学習予定表もでき上がっていますので、それに沿った学習をあせらず実行すれば、8月の時点ですべての学習を終え、9月~10月は実践的なトレーニングとして最後のまとめができるようになっています。

昨年12月から刊行を始めている「おけいこカード」は、ペーパー学習の前にすべき「カード学習」を家庭で可能にする新教材です。カード操作による試行錯誤を通して、物と物との関係をつかみ、論理を形成していくはずです。どんな観点からの質問にも答えられるよう、しっかりとした学力を定着させるために、ぜひ活用してください。

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