週刊こぐま通信
「室長のコラム」ペーパー主義では、合格できない
2005/04/28(Thu)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可

受験クラスが始まってもう半年になろうとしている今の時期に、入会面接を希望する方が毎年何人かいます。受験に対する準備を全然してこなかったわけではなく,個人の先生について学んだり、大手塾に通っている方がほとんどです。それなのに何故、今頃転塾してくるのでしょうか。色々お話を伺うと、「過去問」ばかりをペーパーでトレーニングする指導方法に疑問を感じているようです。その結果、こぐま会の模擬テストでは、難しいペーパー問題は出来るのに、具体物やカードを使った個別テストで、答の根拠をしっかりと説明できず得点できないようです。家庭学習の様子を伺っても、こぐま会で出しているペーパー教材はもうほとんどやりつくしているのに、個別テストで点が取れないというのです。私が1時間ほどチェックしてみますと、確かに難しいペーパー問題はよく出来るのに、答えが何故そうなるのかを聞いても十分に答えられないし、具体物やカードを使ったテストでも、答は出ても理由が説明できないのです。ペーパーだけのトレーニングで、解く方法を教え込まれた子どもたちに典型的に見られる症状です。私が以前から警告している、「間違いだらけのお受験対策」で学習してきた典型的な子どもです。難しい問題が出来て、基本となる問題の考え方が説明できない子どもたちは年々増えています。しかし、これは難しい問題が本当にわかっているのではなく、解き方を教え込まれた結果の出来具合なのです。難しい問題を本当に理解できていれば、基本問題が説明できないということはありえないのです。つまり、幼児の場合、本当に理解していなくても、丸をもらえてしまうということがありうるのです。これは、入試問題にも原因があります。昔よく出されていた知能検査的な問題は、パターン練習で出来てしまったのです。そのことを知った学校側は、入試問題を色々と工夫し始めてきています。2005年度の双葉小学校の問題を見てください。学校側の工夫のあとがはっきりと見てとれます。そうした問題を自信を持って解くためには、「ペーパー主義」の準備教育ではだめなのです。10年ほど前までは通用した方法が、今は通用しなくなっているのです。その証拠に、受験が終わったその日に、問題の聞き取りを子どもたちからすると、「一度もやったことのない問題が出たよ」というケースが増えています。そうした初めて接する問題に対処するためには、「論理的な思考力」を育成するしかありません。それは、ペーパー主義の教育ではなく、「事物教育」・「対話教育」によってしか実現できません。