週刊こぐま通信
「知育を軽視する日本の幼児教育が危ない」何を学習課題にするか KUNOメソッドの実践(5) 言語
第37号 2015/3/24(Tue)
こぐま会代表 久野 泰可
こぐま会代表 久野 泰可

人の話を聞いたり、指示を聞き取ったり、自分で考えたことを表現したりする場合の言葉は、概念としての言語です。そのひとつひとつの意味が理解できなければ、聞いて理解することも、自分で使って話すこともできません。その意味で、概念形成としての言葉の役割を考えると、単に「言語」領域の狭い学習ではなく、すべての領域の学習に関係しています。ですから幼児の言語学習は、将来の国語科へのつながりという面だけでなく、「思考の武器としての言葉の獲得」という点も考える必要があります。
言葉を通して論理を育てるということになると、未測量・位置表象・数・図形の領域で学習している内容に即して、重要な表現を学ぶということが必要です。思考と言語は切り離せないわけですから、それぞれの領域で頻繁に使う表現を事実に即して理解させるということが大事であり、言語の学習はそこまで広げて考えておくべきです。つまり、言語の学習は、すべての領域の学習と深くかかわっているということが言えます。幼児期の言語学習は、そのような視点で考えるべきです。

1. 言葉の学習
2. 話の内容理解
3. お話づくり
1.言葉の学習では、日本語の基礎として、「一音一文字」「動きを表す言葉」「様子を表す言葉」の学習などを行います。また、2.話の内容理解では、話を聞いて、話と場面の絵の違いを指摘したり、登場人物や順序などの質問に答えたり、また話の内容に即した絵を描かせたりしています。3.お話づくりでは、4枚の絵カードを時系列に並べさせ、それを使ってまとまった話をつくらせます。4場面の絵のお話づくりができるようになったら、今度は枚数を減らし、人間の表情を読み取らせたり、原因と結果を考えて話をつくる練習をします。こうした学習は、基本的には「読ませない、書かせない」を原則にしていますが、年長最後の3カ月は、就学準備としてこれまでの学習を踏まえて文字の読み書きも行っています。
では、最初の言葉の理解の学習である、「一音一文字」の授業内容を紹介しましょう。
言語1 「同頭音・同尾音、しりとり」
日本語の基礎としての一音一文字の考え方を身につけ、同頭音・同尾音を学ぶ。その発展として、しりとり遊びを行う。また、おはじきと色ぬりの作業をとおして、聞き取りの力を身につける。
- 1. 一音一文字
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a. 物の名称がいくつの音でできているかを判断する。
b. どこに何の音がつくかを考える。
c. 最初に「あ」「か」「さ」などのつく言葉をさがす。(同頭音)
d. 最後に「ん」のつく言葉をさがす。(同尾音)
- 2. しりとり遊び
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a. しりとり遊びのルールを確認し、全員でしりとり遊びをする。
b. 黒板に貼られた12枚のカードを見て、しりとりでつながるように全員で考える。b-1) 最初のカードを指定したときb-2) 最初のカードを指定しないとき
- 3. 聞き取りの練習
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カセットテープの指示を1回で正確に聞き取る練習をする。
a. おはじきを使ってa-1) 赤いおはじきを7個、お皿の中に入れる。a-2) 青いおはじきと緑のおはじきを3個ずつお皿の中に入れる。a-3) 赤いおはじき2個と黄色のおはじき4個をお皿の中に入れる。a-4) 青いおはじき6個を横1列に並べる。a-5) 緑のおはじきを机の上に6個出し、それを半分ずつに分ける。
b. 学習ボードを使って
b-1) をクーピーペンで緑にぬる。b-2) を半分だけクーピーペンで青くぬる。b-3) を青、◇を赤くぬる。b-4) ミカンのお部屋に赤いを4個描く。b-5) リンゴのお部屋に、緑のを3個、青のを4個描く。
遠山啓氏が提唱した、国語科の基礎としての「原言語」の内容は、もう少し検討し新しい実践を積み上げていかなくてはならないと思っています。読み書きの前にすべき大事な教育内容を確立するために、専門家が結集し実践を積み上げていかなければならないと思います。