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週刊こぐま通信
「知育を軽視する日本の幼児教育が危ない」

なぜインターナショナルスクールが人気なのか

第27号 2014/10/21(Tue)
こぐま会代表  久野 泰可
 教室に通う子どもたちの中にも、日本の幼稚園や保育園ではなく、インターナショナルスクールの幼稚園に通い、日本の私立小学校をめざす子もいます。逆に、現在は日本の幼稚園に通っているけれど、小学校からはインターナショナルスクールに入れたい・・・という希望を持って教室に通ってくる子もいます。詳しく調べたわけではありませんが、今インターナショナルスクールに入れたいと願うご家庭が増えているようです。その背景には何があるのでしょうか。以前、小学校からインターナショナルスクールに入れたいと考えていたあるご家庭のお父さまは、「将来、この子どもたちは、世界を相手に仕事をしなくてはならなくなる。そのために、いろいろな国の人たちと小さなころから接しておく必要があるし、英語力は必須条件だから、小さいうちから英語に接することができるインターナショナルスクールは魅力がある」と話していました。おそらく多くの場合、「英語力を身につけるには一番良い」と考えて、インターナショナルスクールに入学させるケースが増えているのではないかと思います。一方で、将来外国の大学に行くのは問題ないとしても、仮に日本の大学に行かせる場合どうなるんだろう・・・と先の進路に不安を持っているご家庭もあるようです。

実際に、東南アジアの国で講演し、幼児教育関係者に会って話を聞いても、やはりどの国でもインターナショナルスクールは人気があり、特に富裕層の子どもたちは通うケースが多いようです。上海でも、一番人気はインターナショナルスクールのようで、その学校に入学するために、こぐま会の「ひとりでとっくん365日」が盛んに使われています。学校の先生の推薦があったからだということのようです。その分、コピー商品もネット上で相当出回っており、上海で提携している塾の責任者は嘆いていました。インドで講演した幼稚園も、モンテッソーリ教育を主体にしたインターナショナルスクールの附属幼稚園でした。

最近では、日本でも軽井沢に開校したISAK(インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢)が話題になっています。次世代のリーダーを志す15~16歳の少年少女が世界中から集う、日本で初めての全寮制インターナショナルスクールのようです。そこでの授業はすべて英語。世界各国の大学への入学資格として認められる国際バカロレア(IB)が取得できるプログラムや、リーダー養成のために、米スタンフォード大学発祥で世界の教育現場が注目する問題解決の実践的な手法「デザイン思考」も授業に取り入れられているということです。また、10月17日の日経新聞電子版では、「日本でインド式教育 IT立国支える理数脳づくり」と題した記事が掲載されていました。最近来日するインド人技術者の増加を背景に、日本国内で「インド式教育」カリキュラムを取り入れたインド人学校が相次ぎ開校し、日本人も全体の4割を超すという盛況ぶりです。今後、日本の子どもたちの入学の選択肢の一つになるかもしれないと報告しています。そこでは、理数科目と語学を重点強化するだけでなく、IT教育にも力を入れ、幼稚園の年長クラスから実施しているということです。授業は原則英語で行われ、第2・第3外国語も勉強しないといけないといい、フランス語・日本語・ヒンディー語の中から自由に選択するようです。ヨガの授業もあるということです。インド人学校東京校は、開講当初50人ほどだった生徒が、現在は352人に膨れ上がり、そのうち日本人が129名いる(37%)ようです。学費も、一般のインターナショナルスクールに比べて半分から3分の1程度の水準で、これが大きな魅力になっているようです。

インド式教育と言えば、すぐに思い出すのが「インド式かけ算」。日本では小学校2年になってかけ算九九の学習が始まりますが、このインド人学校では、日本の小1に相当する学年から始まっています。それだけでなく、我々が知るところによれば、インド式かけ算は九九の範囲を超えて、2けた同士のかけ算の暗算も容易にできるようです。しかし、我々がよく知る「インド式かけ算」が、理数脳づくりに直結しているかどうかという点になると、それは短絡的な発想であると思います。世界のIT業界でインド人が活躍していることは事実であるし、それを支える教育がインド式教育であることも間違いないかもしれません。しかし、「理数脳」を生みだす育成法は、決して算数づけの教育だけで解決できるはずはありません。事実、この学校でも、算数嫌いを出さない仕掛けづくりとして、道具を使って数字や計算の理念を視覚的、直観的に理解させる「Math Lab(マス・ラボ)」の授業が準備されています。つまり、暗記の教育ではなく、ちゃんと事物を使って五感を刺激しながら、数字の世界の美しさや不思議さを体で感じとらせる授業が用意されているのです。

日本でも昔から「そろばん」があり、今でも盛況のようです。しかし、計算が早くできることと理数脳を育てることは、必ずしもイコールではありません。とすれば何が必要か。それは、我々が30年間重視し、実践してきた「幼児期からの考える力教育」にほかなりません。その意味で、今年からインドのデリーで始めた「こぐま会の教育」が、現地の人たちにどのように受け止められるか、興味深く見守っていきたいと思います。日本人でありながら、インターナショナルスクールに義務教育の段階から通わせようと考えているご家庭が増えているということは、日本の学校教育に対し、何か足りないものを感じているからにほかなりません。一体それは何なのか。それは決して語学教育だけの話ではないと思います。一方で、東南アジアに行って教育関係者に会うと、「日本式教育法」は相当高い評価を受けていることを実感します。そうであるならば、日本式教育法の良さを生かし、足りないものを何なのかを、次代を担う子どもたちの教育に携わる者は真剣に考えるべきだと思います。

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