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週刊こぐま通信
「行動観察だより」

見本制作「イースターエッグ」

第15回 2013/3/23(Sat)
こぐま会教務部長 廣瀬 亜利子
 今週は春休み前最後のクラスでした。
テーマは見本制作で、3月31日に迎えるイースターにちなんで「イースターエッグ」を各自制作しました。

指示制作というと、1工程ごとに教師の指示に従って制作するものですが、見本制作の場合は、教師の指示はありません。各自制作物の見本と材料を渡されて、見本通りのものを作るという課題です。
今回は、「水色の画用紙でできた楕円形のたまごの殻が割れて、中からヒヨコが顔を出す」というかわいらしい作品でしたが、その中にかなり多くの要素が盛り込まれていました :
1. たまごの形に描いてある線に沿ってハサミで切りたまごを作る (20cm×13cm)。
2. その時に残った不要の部分を小さくまとめてゴミ箱に捨てる。
3. たまごの殻を波状に2つにちぎって分ける。
4. 2つに分かれている殻の下半分に描かれている模様を模写する。
5. 上半分に描かれている通り線を模写して正しく色を塗る(波2重線:ピンク・黄緑)。
6. ヒヨコの顔のだけ描かれた黄色い画用紙に、自分で足りないところ(胴体、目、嘴)を描き足して線に沿ってヒヨコを完成させる。
7. そのヒヨコを、正しい場所に、正しい向き(くちばし)になるよう考えて糊で貼る。
8. 2つに分かれた殻を部分的に重ね合わせた状態で穴を開ける。
9. 割ピンで留める。
10. きちんと後片付けをする。

このように多くの要素が盛り込まれた課題でしたが、それらを教師の指示に従って行うのではなく、見本を片手に、すべて自分ひとりで考えて行わなければならない点が見本制作の難しさです。
指示制作と違って、作業工程の順序を正しく合理的に組み立てること、細心の注意を払って見本をしっかり観察し、模様や飾りなどの各部分が全体のどこに位置しているのか、向きはどうであるかなどを子ども自身の力で正しく捉えることが、切る、貼る、描くなどの巧緻性的な技術面に加えて要求されるのです。

ただ今回は、この10工程の中の3.の「たまごの殻を波状に2つにちぎって分ける」について、いきなりちぎるのではなく、鉛筆で線を描いてからその線に沿って切ること、唯一それだけはアドバイスしました。見本をいくら見てもその線は消されて見えなかったからです。そして画用紙を波状にちぎることはかなり難易度の高い課題なので、誘導線なしではちぎること自体たとえ大人でも難しいからです。

この「波状にちぎる」は全10工程の中でもっとも難しい課題でした。子どもたちにもそのことを伝えました :
「このちぎるのを最後まで頑張ってできたらあとは大丈夫だからね!すごく難しいと思うけどみんなならきっとできるから頑張って!」

何人かの子どもたちにとっては「ちぎる」という行為が生まれてはじめてだったようでしたので、ちぎり方のコツを教えました。その子たちも含めて誰一人途中で音を上げたり投げ出したりすることはありませんでした。そのあとの図形模写も、ヒヨコの欠所補完も、決して簡単なレベルのものではありませんでしたが、「ちぎり」の高い壁を乗り越えた後でしたから、かなり易しく感じたことでしょう。それにしても、みんな最後まで本当に良く頑張ったと思います。

出来上がった子どもたちの作品は、見本とはかなりかけ離れた出来栄えであったことは事実です。しかし、そこには努力とあきらめずやり抜いた軌跡がしっかり刻まれていて、心がこもった味のある作品に仕上がっていました。
一人ひとりの顔を見ると、どの子どももまるで山登りして登頂したときのような、達成感と自信に満ちた笑顔でした。いくつかの難所を乗り越え、大きな仕事を最後まで自力でやり遂げたときの喜びの気持ちを、子どもながらに実感できたのではないかと思います。このときの喜びの気持ちが、また次に壁にぶつかったとき、それを乗り越える勇気に変えてくれることでしょう。

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