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週刊こぐま通信
「行動観察だより」

チームワーク

第3回 2012/12/7(Fri)
こぐま会 廣瀬 亜利子
 今日、教室に入っていくと、早く来た数人の子どもたちが、自分の席に「きちんと手はおひざ」で座って待っている姿が目に飛び込んできました。「すごくきれいに座って待てるのね。自分からできたのがえらかったわね!」と、まずは思った通りをことばに表すと、「うん!」と得意そうな笑顔の子どもたち。「でも授業が始まるまでもう少し時間があるし、お友だちもまだ皆そろっていないから折り紙でもしていたら?」と提案してみると、「でも早くやりたいからこうやって待っている!」。そうこうしているうちに前のクラスが終わって移動してきた子どもたちが加わり全員そろいました。
「こんにちは!」とあいさつすると、ものすごく元気な声で「こんにちは!!」と返ってきました。みんなもうすっかり慣れた様子でした。すると、何人かの子どもたちが「先生の手、包帯していないけどもう治ったの?」と心配そうに聞いてくれました。こんなに幼い子どもたちなのに、人のことを見ていないようでしっかり見ているのだなあ、気配りがちゃんとできるのね、と感心しました。同時に、子どもに真似されても大丈夫であるよう意識して発言したり行動したりしなくては!と改めて思いました。

今日のテーマは共同製作。行動観察考査における代表的な課題のひとつです。何を使って製作させるか、扱う道具や材料などは学校によってさまざまですが、1グループの人数はどこも大体同じで、4~5人です。今回は、3~4人ずつのグループに分かれて、大、中、小の3個のダンボール箱を使って何かひとつの大きいものを作るというテーマで行いました。製作のための材料は、小さいものから大きいものまでさまざまな大きさや形の空き箱、ペットボトル、紙コップ、発泡スチロールの容器、モール、ストロー、折り紙、すずらんテープ、はさみ、ガムテープ、セロハンテープ、etc. で、これらを材料置き場に置き、それぞれ必要に応じて取りに行くという形式を取りました。
まずグループごとに与えられた3つの箱を触ったりにらめっこしながら、何を作りたいか、何ができそうか、お互い意見交換してもらいました。交番、ロボット、クリスマスツリーとまもなく決まりました。そして、クリスマスツリーをどう組み立てようか、どういう飾りつけをしようか、交番の赤いランプはどうやって作ろうか、どういうロボットにしようかなど、グループ毎に材料置き場と箱との間を行ったり来たりして話し合いながら製作に取り組みました。
子どもたちの様子を見ていると、はじめから終わりまでずっと仕切っていた子、何か言いたそうではあるものの発言するチャンスがつかめなかった子、全く人任せの子、工作がとても得意で、ガムテープの扱い方をお友だちに教えてあげていた子など、さまざまでした。ひとつだけ全員に共通して言えたことは、「とにかく楽しそう」ということでした。どのグループも、それぞれにとても工夫がよくできて、どれも大変素敵な作品に仕上がりました。

今年度もまた、共学校、女子校を問わず多くの学校で共同製作が出題されました。
子ども同士の関わり方、協調性、チームワーク、創意工夫などが、評価の観点であることは間違いありませんが、中でもキーワードは「チームワーク」かな、と思います。

約1年前、ゆりクラス(年中児)のある日の授業でお城作りをしたときのことを思い出しました。その日は、クラス10人の子どもたち全員でひとつの大きいお城を造るという前提でしたが、できあがったのは「10個の小さいお城」でした。3~4歳ぐらいの子どもたちにとって「みんなでひとつ」はとても難しいのです。その年齢の子どもは、みんな「1匹狼」で、たとえ何人かで同じ場所にいたとしても、個々に単独行動を取るという傾向が強く見られます。自分以外の人の行動を意識したり、人と関わるといった集団行動ができる年齢ではありません。それが少しずつ人と関わり合うことができるようになり、まわりの存在を意識し始め、やがて協力し合い、チームワークをとることができるようになります。
あのとき10個のお城を個々に造ることしかできなかった子どもたちが、協力し合ってひとつのものを造ることができたのです。しかも話し合うこともとりあえずできたのです。子どもたちは確かに成長しながら前にすすんでいるのだなあ、と強く感じました。もちろん話し合いは、上手というにはほど遠いものではありましたが、1年前との違いの大きさがすごいと思いました。

授業のはじめに「大丈夫?」と私の手を心配してくれたあの一言に、人に対する意識の芽生えを感じましたが、それは子どもたちが人と関わり始めた証とも言えるでしょう。
次に共同製作をしたとき、子どもたちがまたどう変わっているかとても楽しみです。

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