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週刊こぐま通信
「行動観察だより」

うさぎさんのお家にお届けもの

第2回 2012/11/30(Fri)
こぐま会 廣瀬 亜利子
 先週から始まった行動観察クラスですが、2回目の今日、皆元気な顔を見せてくれるかな?と少しドキドキしながら教室に入りました。前回、「はじめまして」のごあいさつのとき、緊張からか表情が少し硬い子どもたちでしたが、今日は皆はじめから表情がとても明るくやわらかく、誰一人からも不安そうな表情は見られませんでした。
私「こんにちは!」
子ども「こんにちは!」「お空暗いから『こんばんは』だね!」
私「そうね。確かにちゃんの言うとおりね。まだ5時なのにもう暗いものね。」
こんなあいさつから始まりました。ところで、私の名前覚えてくれているのかしら?とふと不安になり、「先生の名前覚えている?」と静かに尋ねてみると、「ありんこ先生!」とキラキラ目を輝かせながら元気に声をそろえて答えてくれました。

今日のテーマは「指示行動」でした。「ウサギさんとクマさんのママに頼まれたものをひとりでお買い物してお家に届ける」という設定で行いました。「赤、緑、黄色のつみ木が入っている箱から1つくじ引きし、あらかじめ伝えられている約束に従って1人ずつお買い物をする。そして、レジでお会計したときに渡されるお届け券の色が、ピンクならウサギさんの、茶色ならクマさんのお家に買った物を届ける」という内容でした。約束は「赤ならいちごかさくらんぼをかごに、黄色ならバナナかレモンを鍋に、緑ならピーマンかきゅうりを大きい深皿に入れて」、個数は、1回目はすべて2個ずつ、2回目は「赤5、黄4、緑3」と変化をつけました。本物の八百屋さんのように場面設定をし、指定した容器と物は、子どもが混乱しないようにあえて対応づけてそばに置きました。そして子どもたちに約束内容を説明する際も、「いかにも指示行動」と感じさせないよう、あくまでも「ウサギさんとクマさんのママに頼まれてお買い物のお手伝いをする」というストーリーに徹しました。

行動観察テストの中でも代表的な課題のひとつである指示行動ですが、この30年間の出題内容を振り返ってみると、いっとき出題が減った時期もありました。世の中のあちらこちらで「コミュニケーション能力」と囁き出した数年前、行動観察のテスト内容も漏れなく「自由あそび」や「集団ゲーム」など、人との関わり方を見る内容にシフトして行きました。その後、特にこの2~3年の間に、「指示行動」がまた復活してきたようです。小学校という集団生活の中で、先生の話を自分の力でしっかりと聞き、正しく理解し、自己責任において行動できる子どもであるかどうかを見たいのだと思います。中でも一番のポイントは「自分の力で聞き取ること」です。そのような力を育てるために私たち教師は、子どもが自信を持って堂々と行動できるように導く使命があります。まずは確実に覚えられるぐらい簡単な指示から始めて、正しくできたら褒めることです。恐怖感や不安感を抱かせてしまうような逆効果なことはしたくありません。いかなる活動においても子どもが楽しいと感じること、そして教師は常に褒めるチャンスを狙い続けながら子どもを観察すること、それが必須ポイントです。

子どもたちは皆大変楽しんでくれました。そして「もう立派に一人でおつかいできるわね。手伝ってくれて助かったわ、ありがとう。」と声がけしたときの、子どもたちの満足そうな顔がとても輝いて見えました。「もっとやりたい!」と強くせがまれましたが、「みんなで違うゲームしましょう。道造りゲーム。」:教室の床の上に一人ずつ順番に前の子どもが置いたエバフォームに1個ずつ繋いで道造りをしました。お約束は、「エバフォームを1個箱から取って前のお友だちが置いたものに繋げる」「繋いだらできるだけ早く戻ってきて次のお友だちにタッチして最後尾に付き体操座りで順番を待つ」
皆で一斉にひとつのものを作り上げる「共同製作」というのも、行動観察テストにおける代表的な課題のひとつですが、最近、一人ずつ順番に何かを「つなげて」ひとつのものを完成させるというような、ちょっと新しいタイプの指示製作課題がところどころで出題され始めました。
皆思いのまま、前へ横へと自由に繋げていき、短時間にも関わらず迷路のような立派な道ができました。そして、自分たちで造り上げた道を皆で1列に並んでお散歩しました。そうこうしているうちに「そろそろ帰る時間です。お片づけしましょう!」
「え~!?もう?楽しかったのに~!」
今日も楽しく過ごしてもらえたようでした。1回ずつ「楽しかった」という思いを積み重ねて行くこと、単純なことですが大切にしていきたいです。

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