週刊こぐま通信
「学習相談Q&A」【質問64】
2007年9月28日 回答
受験生の皆さまの学習相談に、こぐま会室長がお応えします。 模擬テストの結果を見ると、学力のほうは安定し、ある程度の点が取れるのですが、いつも行動観察で点を落としています。実際の入試で行われる行動観察では、どんな観点で評価がなされるのか。そしてこれからでも間に合う対策はあるのか。アドバイスをお願いします。

小学校入試の合否が学力だけでは決まらないという点を象徴しているのが「行動観察」ですが、ペーパーテストの枚数が減っていくのに反比例して、行動観察は重視され始めています。この行動観察の評価の基準は学校により決まっているはずですが、同じ子どもの動きでありながら、学校によって評価の基準が違うということはありうることだと思います。それは学校の教育方針と合うかどうかであったり、子どものどんな側面を何を見たいかという学校側の出題意図に照らして決められるわけですから、違いがあって当然だと思います。
では、なぜ行動観察を重視するのでしょうか。学力試験だけで合否が決まらない背景は必ずあるはずです。それが何なのかをとらえることが、どのような対策を採れば良いのかということにつながっていくはずです。
だいぶ前のことになりますが、「なぜ行動観察が重視されるのか」とある校長先生に質問したところ「年長の秋の学力は、機械的なトレーニングが多いため、入学以降の学力を保証しないし、遊べない子は入学しても伸びないんだよ」という答えが返ってきました。つまり、小学校入学後の学習のレディネスを考えたとき、学力試験だけではチェックできないと学校側が考えているのです。だからこそ、学力試験とセットで行動観察が行われているのです。
そう考えてみれば、評価の観点は自ずから明らかになってきます。行動観察はお行儀のチェックではありません。また、何かが「できた-できない」という視点だけの評価でもありません。人の話がしっかり聞けるかどうか。子どもらしく物事に積極的にかかわれるかどうか。集団活動のルールを理解し、ほかのお友だちと協調して物事に取り組むことができるか。そして、自分の考えをしっかり持ち、ほかのお友だちと話し合い(会話すること)ができるか・・・総じて、入学後のさまざまな活動の基本ができているかどうかを見ようとしているのです。
そのように考えれば、日常生活そのものが問われているわけです。とりわけ国語力を重視していこうとする今後の教育界全体の動きを見ると、「会話力」が相当重視されてくることは間違いありません。人の話をしっかり聞くだけでなく、自分の考えや意見をしっかり言える子どもが求められてくるはずです。
最近の行動観察は「自由遊び」だけでなく、運動的な課題や絵画製作的な課題も増えています。それぞれの課題には身につけておくべき能力がありますから、それをしっかりトレーニングすると同時に、ものとのかかわり、人とのかかわりにおいて、自ら働きかけていけるだけの意欲を育てておかなくてはなりません。あと1ヶ月しかありませんが、あと1ヶ月もあると考え、「会話力」だけは、高める努力をしてください。