ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「知育を軽視する日本の幼児教育が危ない」

幼児教育に新しい風を

第45号 2015/7/28(Tue)
こぐま会代表  久野 泰可
 昨年1月以来、1年半にわたり「知育を軽視する日本の幼児教育が危ない」と題したコラムを書いてまいりました。多くの皆さまにお読みいただき、また多くの方から感想・意見もいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。このコラムも今回をもちましていったん終了させていただき、また時機が来ましたら再開させていただこうと思います。

幼児教室という極めて特殊な教育環境の中に身を置き、また受験という現実的な課題を抱えながらも、「幼児期の基礎教育はどうあるべきか」を問い続け、43年間も現場に張り付いてきました。この間、子どもたちの基礎教育にふさわしいメソッドと「教具・教材」を開発し、大勢の皆さまに使っていただきました。これらはすべて、日々の実践活動から生まれたものです。教具・教材を全国の書店に置かせていただいた関係で、多くの方々との出会いがありました。またそのことが縁で、新しいビジネスが始まりました。異業種がそれぞれが専門とする経験を出し合って、新しい価値・新しい商品を生み出していくという躍動感に満ちた仕事が実現しつつあります。アジアを中心とした海外への波及も、教材販売を通して知り合った方々からの声かけから始まっています。なぜ、私たちが開発した教具・教材が支持され、多くの声かけをしていただいているのか、当初はわかりませんでしたが、関係者の皆さまと議論していくうちに、

1. しっかりとした教育理念に支えられた教具・教材であること
2. 何よりも、実践の現場で生まれたオリジナルなものであること

この2点が、その理由であることに気づきました。「教科前基礎教育」「事物教育」「対話教育」の3つの理念を掲げ、43年間も現場に張り付いて子どもたちの指導にあたる一方で、「日本の幼児教育の在り方」に現場の人間として発言していかなければならないという想いで、今日までやってきました。その過程で生まれた教具・教材だからこそ、多くの皆さまに支持されたのだろうと思います。私自身は、この仕事を通して、大勢の教育関係者の皆さまと出会い、議論し、新しいビジネスを構築できたことを大変幸せに思います。

この1年半、幼児教育をめぐるさまざまな動きに現場の人間としてコメントし、また、多くの皆さまから支持されている「KUNOメソッド」の理念と実践内容の紹介もさせていただきました。教育改革は、内容が伴わないとゆがんだ方向に進んでしまいます。また、子どもたちと日々格闘している現場の人間が声を上げなければ、現場は何も変わりません。その現場からの声は、単に自らの経験を伝えるだけでなく、確固たる信念を持って、自らの実践を理論化していかなければなりません。その努力を怠ると、現場を知らない官僚・学者文化人主導の改革に終わってしまいます。

幼児教育の大切さが強調されているわりには、何をどうしたら良いのかの具体策がないのが、今の日本の現状です。これから、国家レベルで幼児期の基礎教育が整備されていくはずですが、間違った改革になるのではないかと大変危惧しています。そうならないことを願いつつ、「幼児教育に新しい風」を吹き込むために、体力の許す限り現場での指導を続けながら、発言しつづけたいと考えています。

PAGE TOP