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週刊こぐま通信
「知育を軽視する日本の幼児教育が危ない」

動き始めた日本の幼稚園

第10号 2014/3/18(Tue)
こぐま会代表  久野 泰可
 韓国の幼稚園で、年中・年長合わせて8,000名近くの子どもたちが、私の開発した「KUNOメソッド」で学習しています。また上海では、提携する幼児教室で500名以上の子どもたちが、アフタースクールでの学習に励んでいます。日本の幼稚園や保育園に導入される前に、韓国や中国で取り上げられているということが、知育を軽視してきた日本の幼児教育の「今」を象徴しているように思います。しかし、日本でも「KUNOメソッド」の導入の動きが徐々に始まり、チャイルド社と提携した保育園・幼稚園への導入が、首都圏を中心に現在70園程で行われています。

日本の幼児教育関係者も、「幼児期における正しい基礎教育」を模索し始めたようですし、自治体でも、幼児教育の在り方を真剣に検討し始めているところも増えてきたように思います。日本の英語教育がアジアでは最低ランクに位置するように、幼児期の教育も、このままではアジア諸国の動きに後れをとってしまいます。しかし、最近韓国の園長先生方だけでなく、日本の幼稚園や保育園の園長先生が私の授業を見学に見えるようになりました。また、英語教育の在り方を考えて、「KUNOメソッド」による英語授業ができないかを模索するために、私の授業を見学に見える方もいらっしゃいます。こうした動きを、私自身は大歓迎しています。

受験競争に象徴される「暗記主義の教育」が、多くの人たちの頭にこびりついており、そんな教育を幼児期からすべきでないという、まったく正当な理由で、これまで幼児期の知育に対する否定的な考え方が蔓延していました。しかし、私たちが今実践しているように、決して教え込みでない幼児期の教育があり得るのです。その内容を評価する人が日本には少ないと言ったら言い過ぎかもしれませんが、『読み・書き・計算』が基礎教育の全てだと思っている限り、「考え方」を育てる教育などイメージできるはずはありません。今、東アジア、南アジアをはじめ、幼児教育に熱心な国の方々は、決して幼児期に技能的なものを身につけさせようとして、そのプログラムを求めているわけではありません。計算が早くできたり、ことばの数を増やしたりする教育ではなく、「考える力」を育てる教育はどうあるべきかを模索しているのです。そうした人たちの目に、「KUNOメソッド」の独自性が伝わり、これを導入したいという申し出が増えているのです。

「体を使った活動」を踏まえ、それを繰り返しの「個別の学習活動」につなげていく際、一番の壁は、1クラスの人数です。韓国の園長先生方とセミナーを行うと必ず出てくる質問は、30名1クラスの物理的条件では、「KUNOメソッド」を導入するのは難しいという内容です。私のクラスでも、最大16名ぐらいですから、それが30名を超すような条件下では、絶望的になってしまうというのです。確かにこの問題は深刻です。KUNOメソッドに限らず、何か具体的な目標を据えた学習活動を行う場合、幼児期に1クラス30名以上の子どもたちというのは、指導の現場としてどうか・・・という疑問もわいてきます。数年前、日本のある保育園に導入する際に、クラスの人数を半分に分け、15名程度を学習活動の基本クラスとし、片方のグループが学習している間、もう片方のグループは別の活動をしているとしたらどうかと提案しました。実際にそのような形で実践して、成功している保育園もあります。この1クラスの人数の問題は大きな問題ですが、そのことで意図的な教育全てをあきらめてしまうことはありません。柔軟に対応すれば、どんな条件下でも幼児期の基礎教育は可能です。

逆に一番好ましいのは、私たちが学習指導の導入部分で行う「体を使った活動」が、園での生活においては、子どもたち全員が日常的に共有しているという点です。その活動を前提に考えれば、グループ学習での導入はスムーズに進み、一人一人の子どもたちが、学習課題に即して試行錯誤する時間を十分保証することができるはずです。1年間の園での行事も含め、生活単元学習的な活動の共有は、幼児期の基礎教育のためにはとても重要です。KUNOメソッドが本当に力を発揮するのは、特別に作られた空間ではなく、幼稚園や保育園といった、幼児にとって日常的な空間での基礎教育だと確信しています。

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