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週刊こぐま通信
新聞連載コラム「幼児教育に新しい風を」

第10回「幼小一貫教育」
-現場教師の奮闘期待-

こぐま会代表  久野泰可
 「中高一貫」や「小中一貫」に比べ、日本では「幼小一貫教育」の歴史は短い。しかも、今試みられているプログラムの多くは、形ばかりの幼小一貫にすぎない。「何を一貫教育の中身とするか」という議論が乏しいことが、その原因だ。

理念があっても具体案がないため、現場が困惑してしまう。そもそも日本では、幼児期の"教育"が軽視されすぎてきた。だから、小学校低学年の学習内容を薄めて、幼児に下ろして行えばよいというような乱暴な意見が飛び出してくる。

幼児期の学習を小学校の教科学習につなげていくためには、既成概念にとらわれない新しい発想が必要だ。私たちは「教科前基礎教育」「事物教育」「対話教育」の三つの理念を掲げ、民間の幼児教室で実践してきた。そこで開発したプログラムや教材は、これからの幼児教育を考える際に役立つはずだ。

「幼小一貫教育」では、教える側が学科学習の基礎とは何かを認識した上で、子ども自らが事物に働きかけ、試行錯誤する経験を大事にする必要がある。同じ考え方・同じ方法で指導しなければ、「幼小一貫教育」を行う意味はない。例えば数の教育であれば、最初から計算問題に取り組むのではなく、子どもたちの生活や遊びの中にある数体験を教室で再現し、数の変化をとらえる経験の上に、以前から行われてきた「四則演算」を導入すべきである。

教育における変革は、現場の教師たちが、実践を踏まえて、自らものを言う雰囲気をつくらなければいつまでたっても実現しない。子どもの発達の道筋を明確にし、日々の教育活動の中で、「幼小一貫教育」の新しい課題を発見していくことが大事だ。幼児教育の世界に新しい風を吹き込むのは、子どもたちと日々奮闘する現場教師でなくてはならない。

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