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週刊こぐま通信
「代表のコラム」

今年の入試はどう行われたか(1)

第877号 2023年12月8日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 2024年度の私立小学校入試はほとんどの学校で合格発表があり、今後は国立附属小学校の残りの学校の入試が行われます。今年は新型コロナ5類移行後の最初の入試となり、さまざまな面で注目されていました。
  1. 学力試験は難しくなったのか
  2. 行動観察試験はどう変化したのか
  3. これからの入試対策はどうあるべきか

今回は、主要女子校10校の学力試験の内容について分析してみました。子どもたちから聞き取ったそれぞれの学校の入試問題を単元別に分析すると、今年の入試の特徴がつかめます。ここから何を読み取るのか、それを来年以降の受験対策に活かさなければなりません。

  1. 今年の頻出問題は、これまでと違って少し変化が見られます。特に図形課題が増えたことが読み取れます。また、数の問題は一場面を使った総合問題が多かったこと、聞く力を問う「話の内容理解」はどの学校も相当力を入れているようで、それ以外にも「指示の聞き取り」が単独で出されているケースが多いことがわかります。また、四方からの観察、回転図形、交換、魔法の箱といった論理性が求められる問題もたくさん見られます。全体としてよく出された問題を箇条書きにしてみると次のようになります。
    (A)図形構成―図形分割
    (B)一場面を使った数の総合問題
    (C)四方からの観察
    (D)交換
    (E)回転図形
    (F)魔法の箱
    (G)しりとり
    (H)指示の聞き取り
    (I)記憶
  2. 難易度に関しては、全体として2019年~2022年に行われた試験と比べるとやや難しくなった感じがしますが、コロナ以前のような難しい問題はまだ少ないように思います
  3. 指示の聞き取りや記憶の問題が増えた背景には、低学年の学力に関し、以前に比べ集中力が劣っているという現実があるのではないかと思われます
  4. 話の内容理解がこれまで以上に重視されている背景には、3.と同じような理由が考えられます。また、今回のPISA(Programme for International Student Assessment)の学力試験では相当順位が上がりましたが、それは日本の子どもたちの「読解力」に対する懸念が最近特に報道されてきたことと関係がありそうです
  5. 図形問題が増えているのは、他の領域に比べ、オリジナルな問題が作成しやすいということがあると思います。今年も線対称や重ね図形が出題されていましたが、最近少なくなっていた「図形構成―分割」の問題が増えたのは、図形理解の基本であるし、子どもたちに問題の意図を伝えやすいという側面もあるように思います。また、日常的に経験しているパズルが前提になっていることを考えると、図形的なセンスを問いかける問題としては、最適だと考えている証拠です
  6. 言語領域の問題の中心は「話の内容理解」ですが、言葉の学習としてはやはり「しりとり」「言葉づくり」「言葉つなぎ」といった「一音一文字」の考え方を応用した問題が多いことがよくわかります
  7. 今年は、回転の要素を取り入れた問題はそれほど多く出されていませんが、同じ「回転」と括ることができても、これまでとは違った工夫された問題が出されていることに着目しなくてはなりません
  8. ほとんどすべての問題が、こぐま会で出版している幼児期の基礎教育に必要な学習課題をまとめた「ひとりでとっくん100シリーズ」の中から出題されています。受験向けの特別な内容ではなく、小学校以降に必要な基礎学力が問われているわけですから、基礎をしっかり身につけることが大事であることがわかります。ひとりでとっくんシリーズが、教科書のない小学校受験の中で教科書的役割を果たしているというのは、こうした事実に基づいています
  9. 出題された問題は、以前のコラム(872号)で予想した通りで、その範疇に収まる問題です。ですから、小学校入試で問われる問題はほとんど決まっており、その中でどう応用されているかを見ておく必要があります

12月10日に行う「入試結果速報会」では、具体的な問題を紹介し、問題の意図や難易度をお伝えします。そのうえで、これからどんな対策を取る必要があるかをお話しさせていただきますが、それに先立ち工夫されたいくつかの問題を紹介します。


1. 図形分割・構成
上の絵を見てください。左の形を1回ハサミで切ったあと、組み合わせて右の長四角の形を作ります。
  • 月の問題です。同じように、この形を1回切ったあとに組み合わせて、右上と同じ長四角になるようにするには、どこを切ればよいですか。その場所に赤で真っすぐな線をかいてください。
  • 太陽の問題です。今度は2回切って右上と同じ長四角を作ります。どこを切ればよいですか。その場所に赤で真っすぐな線をかいてください。

2. 回転図形
上のお手本のお部屋を見てください。左の形が矢印の数だけ右に転がって着いたところにがついています。
  • お手本と同じように左の形を右に転がすと、どこまで行きますか。着いたところにをつけてください。

3. 数の総合問題
動物たちが年越しの準備をしています。
  • 掃除をしている動物は何匹ですか。その数だけバナナのお部屋にをかいてください。
  • こたつに座っており紙をしている動物が外に遊びに行きました。そのあと2匹こたつにやって来ました。今、こたつに座っている動物は何匹ですか。その数だけナシのお部屋にをかいてください。
  • リボンをつけたミミちゃんはおだんごの列に並んでいます。何匹かやって来てミミちゃんは後ろから6番目になりました。後ろに来たのは何匹ですか。その数だけブドウのお部屋にをかいてください。
  • リンゴがのっているテーブルにお箸が置いてあります。このあとお箸の数だけお客さんが座ります。あと何枚の座布団があればよいですか。その数だけメロンのお部屋にをかいてください。

4. 同図形発見・四方からの観察
水槽の中を魚が泳いでいます。
  • 左のお部屋の魚と同じ形の魚を水槽の中から見つけてをつけてください。
  • この水槽を反対側から見るとどう見えますか。リンゴのお部屋から選んでをつけてください。

しりとり
左上のお部屋を見てください。ここにかいてある絵は「トウモロコシ」からはじめても「しっぽ」からはじめても、全部の絵がしりとりでつながります。
  • 同じように、どこからはじめてもしりとりでつながるものを探してをつけてください。

交換
おはじき2個でリンゴ1個、おはじき3個でブドウ1房を買うことができます。
  • おはじき10個でリンゴは何個買えますか。その数だけリンゴのお部屋にをかいてください。
  • ブドウを2房買える数のおはじきで、リンゴはいくつ買えますか。その数だけブドウのお部屋にをかいてください。
  • ブドウを3房買える数のおはじきでリンゴをできるだけ買うと、おはじきはいくつあまりますか。その数だけリンゴとブドウのお部屋にをかいてください。

紐の絡み
動物たちがリボンを持っています。
  • ウサギとリボンがつながっている動物にをつけてください。
  • クマのリボンは他の動物のリボンの下を何回くぐっていますか。その数だけリンゴのお部屋にをかいてください。
  • キリンのリボンは何回わっかになっていますか。その数だけナシのお部屋にをかいてください。

今回は、秋に行われた私立小学校入試の中で、女子校10校の問題を中心に学力試験を分析し、その傾向をお伝えしましたが、入試では行動観察や面接も行われ、その総合点で合否が決まります。学力以外の試験については、次回から順次報告いたします。


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