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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

アラニア(トルコ)で講演会と模擬授業を行ってきました

第851号 2023年4月7日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 この度「Gakken Turkey Inovatif Eğitim A.Ş.」(以下学研トルコ)と業務提携を締結し、KUNOメソッドを提供することになりました。共同で新しい幼児教育プログラムを開発し、就学前教育として、今後現地の幼稚園に導入していく予定です。その準備のために、3月18日から28日までトルコを訪問してセミナーや模擬授業を行い、また試験的に実施している幼稚園を見学してきました。

3月21日に、アンタルヤに近いアラニア市の商工会議所のホールに、大勢の教育関係者の皆さまにお集まりいただき、KUNOメソッドの教育内容と指導方法をお伝えしました。KUNOメソッドの基本的な考え方である「教科前基礎教育」「事物教育」「対話教育」の3つの教育理念についてお話しした後、メソッドの核である「3段階学習法」に従った模擬授業を行いました。その際、生徒役として3人の参加者に壇上に上がっていただきました。テーマは「秘密袋」で、カリキュラムは以下の通りです。

  1. 2つの箱に同じ具体物を入れておく。最初の箱でつかんだものと同じものを、別の場所にある箱の中から取り出す
  2. 一人ずつ秘密袋を渡し、中に入っている6つのつみ木の中から、見本に示したものと同じつみ木を取り出す
  3. 厚紙で作った、やや変形した平面図形や立体を秘密袋に入れ、それを触策し、同じ形を紙に描く
  4. 紙に描かれたひし形と立方体を模写する

これらは、こぐま会のばらクラス(年長児)で実際に行っている内容です。触策だけでものの特徴をつかむ、秘密袋と図形模写を関連付けた課題です。大人ですから、この課題ができないことはありませんが、触策した形を紙に描く問題では園長先生も苦労されていました。身体を使い、手を使い、最後に頭を使って学習する3段階学習法を伝えるために、私が海外で模擬授業を行う場合はよく取り上げている内容です。幼児期の教育は知識を教え込むものだと考えている方は海外でも大勢いらっしゃいますが、子ども自身が自ら物事に働きかけ、論理数学的知識を自ら構成していくというプロセスの大切さを伝えるため、この授業は大変わかりやすいものだと考えています。

このセミナーと前後して、9月から教育プログラムの導入を検討しているアラニア郊外のヤシャム・タシャリム校を訪問しました。中高一貫で、アラニア市内の高校では進学率がトップの大変評判のいい学校のようです。今回の訪問は、この学校が開園準備を進めている幼稚園にて、学研トルコと共同開発したカリキュラムの導入を検討されているために実現したものです。創始者であるメフメッド・サリフ・オルギュン校長は日本の文化を高く評価され、日本語クラスを設けたり、柔道のクラスも設置しているようです。そして日本の幼児教育でよいものはないかと探されていた折、学研トルコ代表の方がKUNOメソッドを紹介してくださり、一定の評価を得たために今回のセミナー開催という運びになりました。アラニア市内で評価の高い学校ですから、幼児教育に対する期待も大きいはずで、この学校への導入をきっかけに、トルコ全土に広まっていくことを願っています。

3月24日には、イズミール郊外の森の幼稚園「レンクリオルマン幼稚園」に出向き、試験的に実施しているKUNOメソッドの授業を見学してきました。この園は、イズミールの市街を見下ろす高台にあり、森に隣接した園舎を持っており、保護者の皆さまが共同組合を作って設立したそうです。3歳児から5歳児まで約130名の子どもたちが通う「森の幼稚園」です。今日本でも話題になっている「森の幼稚園」は、ドイツで始まったと理解していますが、自然の中でさまざまな経験を積んで主体的な学びを身につける教育方法です。私たちが園舎に到着した時、年中児の子どもたちがリュックを背負って山に向かって出発するところでした。2時間ほど山に入ってテーマを決めていろいろな遊びを経験し、園舎に戻ってくるということでした。園長先生に園舎を案内していただきましたが、子どもたちが使う遊具はすべて手作りで、中には大掛かりな遊び小屋を保護者が協力して作るということもあるようです。子どもたちが制作のために使う素材も、すべて自然の中から集めたものがきれいに収納されていました。 一番驚いたことは、生活上のルールはすべて「子ども会議」で決められるということで、園庭には子ども会議に使う会議場が作られていました。真ん中に焚火のできる炉があって、その周りを、切り株の上に板を渡して2~3人ずつ座れるようになっている長椅子が、三重~四重に取り囲んでいます。そこに全員が集まって、あるテーマにわたって話し合いが行われ、決まったことをみんなで守るというのだそうです。最近では、「教室で先生やお友だちが話しているとき、やかましくて言っていることが分からないから、静かに聞くためにはどうしたらよいか」というテーマで話し合いが行われたようです。子どもを主体に民主的に運営される「森の幼稚園」から学ぶことがたくさんありました。また、KUNOメソッドを体験して、「ペーパー学習が一番楽しい」と言った子どもがいたのには驚きました。子どもたちにとっては遊びと勉強が切り離されているのではなく、初めての経験は新鮮で興味がわき、集中できるものだということを改めて感じました。

文化や宗教が違う国ですから、日本と同じ教材で教育できるわけではありません。私たちが時々教材に登場させる「ぶた」は、宗教上の理由で使えません。こうしたことは精査し、トルコの文化に合った形に変えていかなくてはなりませんが、日本発のプログラムがトルコに根づくことができれば、今世界中で注目されている幼児教育に新しい風を吹き込みことができるのではないかと期待しています。

こぐま会 ニュースリリース(2023年4月6日)


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読み・書き・計算はまだ早い!

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