ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

今年のテーマは「学校が変わる」

第520号 2016/2/26(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 毎年4月~5月の連休を使って行われる「女子校合格フェア」も、今年で12回目を迎えます。今年のテーマをどうしようかと、ここ1カ月かけて議論してきました。昨年12月13日の入試結果報告会に引き続き、1月半ばから始めた学校別入試分析セミナーも無事終了し、そうした分析を踏まえて今年度の入試を予想する「女子校合格フェア」。今年は「学校が変わる」というテーマで行うことに決めました。

43年間、幼児期の基礎教育を通して小学校受験と向き合ってきた私にとって、最近の学校の変わりようには、正直驚いています。昔は考えられなかったこと、例えば情報公開にしても、それも含めて「学校側にこうしてほしい」と願っていたことが、実現し始めているからです。昨年は、大学入試を中心に世の中全体の入試の在り方が議論され、推薦入試に象徴されるように、入試制度や入試方法が大きく変わるに違いない、そうであれば小学校入試も変わっていくはずだ・・・こうした想いで「入試が変わる」と題したフェアを行いましたが、今年はさらに踏み込んで「学校が変わる」と表現したのには、理由があります。それは、私立小学校の存立意義や女子教育の役割が、時代とともに変わってきたことと無関係ではありません。これからの時代が求める人間像や人材育成の在り方について、それぞれの学校が模索し始めているのは事実であるし、リーマンショックや震災以降の受験者の減少に、学校側が危機感を持ち始めているのも事実です。4月新学期を定員割れでスタートせざるを得ないのは、大学だけではありません。私立小学校でもそうした現象は起き始めているのです。

私が40年ほど前、小学校受験の指導に携わったころは、受験には2つの大きな動機がありました。

1. 大学まで続く学校の場合、その大学に行かせる前提で小学校から入学させたい
2. 中学受験がそんなに大変ならば、小学校から入れてしまいたい

このほか、伝統的な宗教教育に対する期待や、学校群制度で行きたい高校にも行けないならば、私立小学校から入れて良い環境で学ばせたい・・・など、受験を目指すご家庭には、それぞれ違った理由があったと思いますが、全体としては、上記1.2.の理由で私立小学校を目指すご家庭が多かったように思います。高度経済成長に支えられ、「お受験」という言葉も登場し、小学校受験が一般的になって大勢の年長児が受験を目指すようになりました。受け入れる学校側は、何も方策を取らなくても毎年4倍以上の競争率があり、安泰でした。学校側は生徒集めのために何の工夫をすることもなく、意図的ではないにしても情報をできるだけ出さないようにしてきました。私が何度も「情報公開をしていただかないと、間違った受験対策で子どもがつぶされる」と主張しても、反応はありませんでした。運動会の様子も部外者は見られない、学内報が外に出るのを嫌がる、学校説明会は毎年同じ調子の一方的な学校宣伝、説明会場で受験に関する質問をしても答えてもらえない・・・こんな時代が長く続きました。しかし、いま定員割れを起こすかもしれないという危機感が、学校の姿勢を変えつつあります。中学校受験塾の先生方に聞けば、中学受験においては昔から普通に行われているという、

1. 塾向けの学校説明会
2. 塾に先生をお呼びして、講演会をしていただく

といったことも、すべての小学校ではありませんが行われ始めました。小学校受験の「中学受験化」と言えるでしょうか。また、それだけではなく、働くお母さまが増えた関係で、いくつかの学校ではすでに学童保育やアフタースクールが設置され始めています。夕食のサービスを提供する学校も出てきました。これは、働くお母さまを支援するという学校側のメッセージです。子どもや家庭に寄り添って、学校改革を行っていこうとする姿勢がはっきりと読み取れます。女子の人材育成にかける学校が、働くお母さま、つまり保育園の子どもを嫌うというような間違ったうわさ話が流れた時代がありましたが、そうではないことが明確になってきています。

時代の要請に合わせて学校が変わっていくのは当然だと思いますが、その変わりようの早さに少々驚いているのは、私だけでしょうか。そうした流れを踏まえれば、入試問題や合否判定の仕方も変わってくるのは当然です。すでにそれは大きな流れになってきており、私が幼児期の基礎教育として開発した「ひとりでとっくん100冊」の中の問題が入試問題に多く採用され、小学校入試の教科書的役割を果たしているようです。決して入試のための訓練用の問題集ではなく、幼児期の基礎教育として受験のあるなしに関係なく学んでいただきたいと作成した問題集ですが、その内容のほとんどが入試問題に採用されているという事実は、昔のような知能検査的な訓練を必要とする問題は姿を消したということでもあるのです。それだけではありません。考える力を求める問題が多く出されるようになってきているのです。

考える力を求める入試問題は、毎日何十枚とペーパーを訓練するような入試対策を求めていません。1枚でも良いので、自分で考え自分の力で解き、どのように考えたかを説明できる力を学校側が求め始めたということです。学校が変わるということは、準備教育をする幼児教室も変わらなければならないということです。合格のため・・・と称してどんなやり方も認められるような受験準備の教育が変わらない限り、学校が求める子ども像からますます離れていくだけの結果になってしまいます。学校が変わり、受験準備の教育の在り方が変われば、小学校入試のための準備教育は、幼児期の基礎教育にとって最大の動機づけになるし、将来の子どもの成長の礎になっていくはずです。

PAGE TOP