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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

お母さんが教えてくれたから・・・

第453号 2014/9/26(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 神奈川県の学校の面接も始まり、都内の学校の願書受付ももうすぐ始まります。1カ月後に入試本番を控え、受験生の皆さまは総まとめの学習に毎日励んでいることと思います。また、保護者の皆さまも願書提出を控え、今が一番忙しい時だと思います。普段と違う生活ペースになりがちで、子どもたちも精神的に不安定になる時でもあります。生活のペースを変えず、入試までこれからも同じように、子どもと向き合う時間を大切にしてください。こぐま会のばらクラス(年長児)も、あと4回の授業を残すだけとなりました。8月の集中授業から始まった「総まとめ」の授業も順調に進み、先週から「領域別総点検」に入り、毎回10枚のペーパーを使って、各領域で出される典型的な入試問題の基本が理解できているかをチェックしています。夏休みに挑戦してきた「過去問」「難問」トレーニングに比べると少し易しく感じる問題ですが、入試問題の8割はこうした基本問題から出題されます。この基本問題でミスをしないよう、少なくとも基礎問題は満点主義で臨まなければなりません。

しかし、毎回授業後の相談では、「テスト結果や家庭学習の出来具合を見ていると、今までできていた問題ができなくなってしまったが、なぜなのか、どうしたらよいのか」・・・といった質問が目立ってきました。こうした現象は毎年この時期に起こることであるし、実際、授業中の子どもたちの出来具合を見ていても、なぜこの問題で間違えてしまうのだろうと感じる場面に出くわします。優秀な子であればある程、指導者にとってその変化が目立ちます。毎年この時期に起こるこうした現象には、いくつかの理由が考えられます。

(1) 夏の学習の反動で、学習に新鮮味を感じなくなり、授業に集中できない。その結果問題の聞き取りができない
(2) 夏に取り組んだ難しい問題の影響で、ペーパーを見た途端、自分で設問を予想してしまい、基本問題をかえって難しくとらえてしまう
(3) 今までの学習の仕方に問題があり、解き方だけを教え込まれてきた結果、問い掛けの仕方が少し変わるだけで、わかっていたつもりの問題ができなくなってしまう。つまり、本当にわかっていなかったということである
(4) 試験を間近に控え、相当のプレッシャーがかかり、間違えることを極度に警戒するため、慎重になりすぎて時間内に終わらない

以上のような理由が考えられますが、一番多いのが(3)の原因です。私はこの時期、難しい問題であろうと易しい問題であろうと、また、できていてもできていなくても、必ず答えの根拠を言葉で説明させています。そうすることによって、本当に理解しているのかどうか、どこで間違えてしまったのかが明確になるからです。しかし、今この時期になっても、基本問題の答えの根拠を説明できない子が多いのです。例えばシーソーによる関係推理の問題、数のやり取りの問題、観覧車の問題、魔法の箱による逆思考の問題、旅人算の基礎としての飛び石の問題・・・数え上げたらきりがありませんが、正解しているのに答えの根拠が説明できないのです。挙句の果て、「お母さんがそうやりなさいと教えてくれたから」・・・というような答えが飛び出してくるのです。自分では説明できないけれども、お母さんがそうやりなさいと言ったからそうした・・・というような答えが返ってくるのです。これでは、時間がたてばたつほど忘れていくだけですし、違う観点からの設問には答えていけません。

私は、今までトレーニングしたペーパーは、基礎であろうと応用であろうと、実際の入試では同じような形で出題されることはまったくないと考えておいたほうがよいと、授業後の説明の時にはいつもお話ししています。学校側が問題を工夫し始め、今までどこにも出たことのない問題を課して、本当の意味で「考える力」が身についているかを見ようとしています。何千枚のペーパーを機械的にこなしても、そこで求められる考え方を身につけなかったら何の効果もありません。多くの場合、ペーパートレーニング主体の学習はそうなりがちです。それでは新出の問題には到底対応できません。そうした学習をしてきた結果、今になって今までできていたと思われる問題ができなくなったと心配されているのです。しかしそれは、そもそも本当に理解していなかったと考えるのが正しいと思います。

この大事な時期になって基本がわからないのでは困りますから、早急に手立てを考えなくてはなりません。この時期になっても間違える基本問題があるとすれば、もう一度、基礎をしっかり確認してください。会員の皆さまは、夏にお渡しした90枚の「基本学習ボード」を使った点検が最適です。時間はそれほどかからないと思いますから、2週間もあれば十分です。こうした子どもたちの現状も含めて、これから入試直前1カ月間の学習で大切なことは、基本に戻ってチェックし、自信を持たせて本試験に送りこむことです。入試問題は、その7~8割が基本問題です。そこで点を落としてしまったのでは、どんなに難しい問題ができても意味がありません。ですから、基本問題はしっかり得点していくという戦略が必要です。それより何よりも、自信をなくした状態で試験を迎えれば結果は明らかです。明るい表情も消え、口も閉ざし、子どもらしさをなくした状態では、学校もその異変にすぐ気づくでしょう。その意味でこれからは、身体だけでなく、心の健康管理も大切です。

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