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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

パターン練習では、思考力は育たない

第454号 2014/10/3(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 11月に都内の入試を迎える受験生は、最後の追い込みで大変な時期だと思います。やればやるほど間違いが気になり、不安でならない様子です。たくさんのペーパーをこなせば安心と思うのか、毎日の学習をペーパー漬けにしてしまい、20枚も30枚も行っているようです。私が主宰する「こぐまひまわり会」 にも、入試直前とあって、会員のみならず大勢の外部生の皆さまも参加されています。それでも1時間の授業で、ペーパーをやり、きちんと説明し、子どもたちにも答えの根拠を説明させるような授業では、10枚のペーパーをこなすのが精一杯です。答えの根拠も聞かないで○つけだけを行い、「できたか - できなかったか」をチェックするだけならば、1時間で20枚のペーパーも可能です。しかし、わざわざ教室に通っていただき、家庭で母親がやる方法と同じやり方をやって、高い月謝を取るようなことはできません。30分で10枚のペーパーをテスト形式で行い、残りの30分で解説を兼ねた授業をすることは、最低限必要なことだと思います。

はじめて出会う子どもたちも、当然日常的に学習している子どもたちですから、ペーパートレーニングも相当積んでいます。「ひとりでとっくん」全3,000枚の中の入試に絡む問題も、相当訓練していてよくできます。しかし、最近授業中に感じることは、難易度は決して高くないのに、設問の方法を変えたり、同じ趣旨の問題でありながら新しい形で出題すると、全問正解者が1人もいないという状況が目立つということです。ほかの難しい問題は解けても、それは繰り返し練習している問題で、まったく新出の問題になるとお手上げ状態です。難問が良くできる子であればある程、基礎的な問題ができないことがかえって目立ってしまうのです。ではなぜこうした状況になるのでしょうか。

新出の問題を自分で考え、正解する子どものほとんどが、答えの根拠を説明させるとしっかりと説明できます。逆に、説明を求めても言語化できない子どもの多くが、ペーパーのみのトレーニングに終始してきた子どもたちのようです。やったことのある問題は難問でもできるのに、まったく新しい形の問題に答えられない子どもたちは、事物に触れ、試行錯誤する経験を持たない子どもたちです。

ペーパーが大量に出されていた時代の問題は、ほとんどがパターン化された問題でした。ですから、ペーパーだけのトレーニングでほとんどの問題が解決できました。そうした時代の反省の上で改善されてきた最近の問題は、枚数も6~8枚で、その多くが学校側が工夫した新出の問題です。決して全てが難問ではないのですが、指示をしっかり聞き、今まで身につけてきた「考える力」を応用していかないと、解けない問題が多く見られます。その時生かされるのは、教え込まれた解き方ではなく、自分で身に付けた「考える力」です。それは、ものごとへの働きかけを通して身に付けた認識能力にほかなりません。私たちが「事物教育」を推進しているのは、幼児の考える力を育てるには、それしか方法はないと考えているからです。受験であろうとなかろうと、その原則は変わりません。事物教育を避けて、安上がりのペーパ―トレーニングだけで受験準備をしようとしたら、それは、今の受験の現実に全く合わない方法で学習しているということになります。「遠回りのようでも、ペーパー学習に入る前に事物を使って試行錯誤する時間がどうしても必要である」ということを痛感します。ペーパートレーニングのパターン練習だけでは思考力は育たないということを、これから受験準備に入る皆さんに声を大にしてお伝えしたいと思います。

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