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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

ベトナムで「KUNOメソッド」の授業が始まります

第394号 2013/6/28(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 6月23日より4日間、ベトナムを訪問してきました。今年4月に「ホーチミン工科大学」で行われた「日越教育フォーラム」で講演し、ベトナムの幼児教育関係者に「KUNOメソッド」を紹介しました。また近い将来、協力してナショナルカリキュラムの補足や、アフタースクールでの独自の教室開講に向けた話し合いを提案しました。そこで出会った「サイゴンアカデミー」の園長にお願いし、園舎をお借りして、そこに通う保護者やインターネットで呼びかけた関係者を集めて、保護者を対象としたセミナーと、子ども参加のワークショップを行ってきました。夕方6時からの開演にもかかわらず、100名近い保護者と、35名ほどの4~5歳児にご参加いただくことができました。

発展途上国における教育の役割は、日本の過去を見れば良く理解できます。特に、IT革命によって生活そのものが変化し、これからの社会を担う子どもたちのために、これまでの発想と違った人材育成が求められています。生活が便利になった反面、欠落していくものもたくさんあります。それは、自らの力で考え、新しいものを作り出していく能力であったり、相手と言葉を通じて分かりあっていくコミュニケーション能力などです。それまでは当たり前とされてきた人間の基本的な能力が欠落していく時代になってしまったということです。これからは、人間が機械に使われるのではなく、便利になったツールを使いこなし、新しいものを作り出していく人間の能力が求められていくはずです。教育はその時代の人材育成を請け負いながら、未来の技術を生み出す能力の開発を請け負う、大事な役割を担っています。これから教育の力で国を発展させなくてはならない発展途上国にとって、「考える力」を育てる教育は不可欠です。「読み・書き・計算」の能力だけでは、将来、国を背負う人材が育成できないことは、教育組織のトップであればあるほど感じていることです。
サイゴンアカデミーは、現在、高校生を中心に1万人近い生徒を抱える私的教育機関です。この組織が、これからベトナムにおける幼児教育に力を入れて行こうという時に、私たちの「KUNOメソッド」に出会い、その内容と方法を高く評価し、今後共同でベトナムの幼児教育に新しい風を吹き込もうと約束してくれました。それは、「事物教育」を中心とした「考える力」を育てる教育です。決して、形を教え込む教育、計算さえできればそれで良いという教育とは違います。

1時間のセミナーでは、こぐま会が東京で実践している内容を映像で紹介し、その後親子で、三角パズルとおはじきを使った数の学習を体験してもらいました。参加されたお母さまは、「こうした教材はベトナムにはありません」「どこに行けば手に入りますか」と質問されたり、お父さまがパイロットの方は、「成田空港に行けば買えますか」等、相当関心を示していました。そんな事情でしたので、ワークショップで使ったパズルとイチゴおはじきは、家庭用教材として使っていただけるよう、プレゼントしてきました。おもちゃもたくさんあり、ワークブックもたくさんあるけれど、「事物を使った教育」はほとんど施されていない現状がつかめました。だからこそ、三角パズルやイチゴおはじきが珍しく、また、それを使って学習する手順を示したことが驚きだったようでした。

9月に2園目を開校するというサイゴンアカデミーの皆さんと協力して、私が40年間かけて作り上げた「KUNOメソッド」がベトナムの子どもたちに受け入れてもらえるよう、今後も現場指導と人材育成のために、頻繁にベトナムに行くことになりそうです。



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