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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

「ことばの会」発足にあたり

第372号 2013/1/18(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 昨年2月まで行ってきた「幼小一貫教育を考える会」を発展させ、より具体的な問題に絞り込んで討議する「ことばの会」を昨年12月に発足させ、第1回目の総会を開きました。この会は、「ことば」に関する各分野からのゲストによるセミナー、講演などとワールドカフェ等を活用した協議により、広く言葉や認識、感情などに関する知見を相互に深め、会員および参加者に寄与することを目的に発足したものです。日本語のみならず、英語、コンピューター言語など、広く「ことば」に関する教育的課題を討議し、教育現場に生かそうという試みです。保育園・幼稚園の教師から大学の教師まで、あらゆる教育現場の人たちが集まり、議論する会です。公立のみならず、私立・民間教育機関、教育に関する仕事をしている企業および個人・・・と広く参加者を募り、第1回目の研究会には35名ほど集まり、議論しました。相互に自己紹介した後、トップバッターとしてこぐま会での実践活動を紹介し、「ことばの会」として取り組むべき課題を提案しました。

こぐま会では、将来の国語科の基礎として、言語領域の学習に3つの柱を設けています。すなわち、聞く力を育成する「話の内容理解」、話す力を育成する「お話づくり」、そして母国語である日本語の理解を深める「ことばの学習」の3つです。この3つの柱でカリキュラムが組まれていることを実際の授業風景を紹介しながら報告しました。そして、こうした実践活動を通し、今後のカリキュラム作りに生かすために5つの討議課題を提案しました。それは次のようなものです。

幼児期における言語教育の課題
A) ことばと言語(生活語と概念語)
B) 思考と言語
C) すべての領域での言語化活動
D) 対話力とは何か(おしゃべり・コミュニケーション能力・ディベートとの違い)
E) 遠山啓氏の提案した「原言語」の内容をどう確立するか

幼児期の基礎教育として教育の現場に立った時、以上5つの課題をいつも抱えながら子どもたちの指導に当たってきました。特に年齢が下がれば下がるほど、生活の中で身につけてきた「ことば」をいかに概念としての「言語」まで高めていったら良いのか。その橋渡し役として、どんな経験を積ませればよいのか・・・そんなことをいつも考えながら子どもたちと接してきました。この問題は、小学生以降の教科学習の中では、それほど顕在化しない問題なのかもしれませんが、「言語」そのものを身につける「幼児期の教育においては、どうしても避けられない課題です。

その概念としての言葉が、考える力とどのように関係しているのか。思考力を深めるために言葉の果たす役割はなんなのか。そして、それを実現するために、すべての領域で行う「言語化」活動はどうあるべきか。こうした議論が必要です。また、今盛んに言われているコミュニケーション能力の低下をどう防ぐか。それは、現場の人間に任された最大の課題です。一つ一つの活動を通し、「考え」のプロセスを言葉で表現することは、とても難しいことです。その上に相手の言ったことも理解しながら、一つの結論に至る「対話力」は、これからの時代を生きる子どもたちに必要とされる能力です。こうした具体的な課題に取り組みながら、遠山啓氏が「歩きはじめの算数」で述べていた「原言語」(教科としての国語科の基礎)とは何か、その指導をどうするかを明確にしていく必要があります。

第1回目の研究会では、こうした視点での私の基調報告を踏まえて意見交換しましたが、第2回目以降は「英語」や「コンピューター言語」の問題も扱っていくことになると思います。2カ月に一度の研究会ですが、さまざまな分野でご活躍されている方々と交流できることが最大の財産だと思っています。多くの方々に参加していただき、現場からの発想を大切にしながら、討議の成果が日々の実践で生かされていくことを期待しています。

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