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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

今こそ、入試改革を

第371号 2013/1/11(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 今年受験される皆さまは、心新たに新しい年を迎えたことと思います。「良い環境の中で子どもを育てたい」・・・その想いが、私立・国立附属小学校への受験につながっているはずです。しかし、経済の停滞や大学受験における公立校の復活等で、2007年度をピークに小学校の受験者数が年々減少しているようです。定員割れを起こさないように各学校でもいろいろ工夫し、生徒集めに力を入れています。合同学校説明会の開催などは、その危機感の表れだと思います。しかし現実は厳しく、新年を迎えた現在でも補欠合格者の繰り上げ合格の連絡が来ているようです。複数合格したご家庭が、まだ判断できず迷っている証拠だと思いますし、2月末ごろまではこうした動きがあるでしょう。その結果、定員割れを起こしてスタートせざるを得ない学校もでてくるかもしれません。一時期関西圏で巻き起こった新設校のブームが、現在どうなっているのかわかりませんが、関東圏では、やはり新設校の生徒集めが大変なようです。「良い環境の中で・・・」という保護者の想いに、学校側が具体的に応えていかなければ、生徒集めはますます大変になるでしょう。

受験するご家庭の意識も変わってきており、「ともかく公立でなければどこでも良い」という考え方は年々減少し、「ともかく○○に入学させたい」という考えで準備する傾向が強くなっています。一方、学校側は合格発表後の辞退者をなくすために、第1志望者が誰かを見極めるため、本試験の前に行われる面接試験で、日程が重なった場合の変更を認めなくなってきています。そのことで併願できる学校が制限されているのも事実です。以前は、理由があれば変更できたものが、合格発表後に辞退者を出さないために、学校自らが受験者を減らすような措置をとっているのが現状です。いつからか、本試験の前に面談を行う方式が定着しましたが、以前は本試験と同時に、あるいはその後に行われていたのです。本試験は、学校説明会がある早い時期から日程が判明するのですが、本試験の前に行われる面接試験(都内では10月中)の日時は、願書提出後にしかわからず、例えば、本来ならば本試験の日程が異なるために受験可能な3校が、3校とも面接日で重なってしまい、1校しか受けられなくなったという事態も生じています。

昨年秋に行われた入試では、試験日程の変更が何校かに見られました。変更する学校側の意図は何であったのか、外部の私たちにはわかりませんが、「良い生徒を大勢集めたい」「合格後の辞退者を少なくしたい」という想いがあることだけは間違いありません。しかし、学校側の事情だけでなく、受験する家庭の視点から改革が行われなければ、まずます受験離れが起き、志願者減少の流れに歯止めがかからなくなるでしょう。情報が開示されず、不透明な部分が多い小学校入試を改革するのは、今がチャンスだと思います。子どもたちを送り出す我々の立場から学校側に要望することがあるとすれば、

  1. 入試に関する情報をできる限り開示する
  2. 合否判定に関する不透明な部分を払拭するために、できる限り合否の基準を明確にし、実力主義の公正な合否判定を行う
  3. 行動観察で何を評価するのか、望ましい子どもとはどんな子かを明確にする
  4. 好ましくない行き過ぎた入試対策のあり方について、子どもを守る学校側の立場から警告を発し、学校側が望ましいと考える準備教育の在り方を広く伝える

ペーパーテストの結果だけでは合否が決まらない、特殊な小学校入試。情報が開示されていないことからくる「間違った受験対策」は、子どもの健やかな成長を阻害しています。この問題を解決する努力を学校側も塾側も怠れば、入試に向けた準備教育の結果、学ぶ意欲を潰されていく子どもたちを大量に生み出す結果になりかねません。学びのスタートの段階でこんなことが起こっているとすれば、それは悲劇以外の何ものでもありません。この業界に参入するハードルも低く、教育に対する素人集団が、「合格」のためだけに教え込みをすればどうなるか。普通では考えられない「商業主義の受験対策」にくさびを打ち込むことができるのは、合否を判断し、子どもを迎え入れる学校側でしかない事は自明の理です。さまざまな面で矛盾が表面化した小学校入試を改革するのは、今がチャンスだと思うのは、私だけでしょうか。

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