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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

受験終了後の子どもたちの学習

第373号 2013/1/25(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 昨年秋に受験を終了し、今年4月から小学校に入学する年長児の就学準備クラスが、1月8日から始まりました。1年生で学ぶ教科の中の、「算数」「国語」「英語」の3教科に繋げる学習です。久しぶりに会った子どもたちは、受験クラス(ばらクラス)で指導していた時よりも一段と成長し、授業中の態度も大きく変わり、姿勢正しく黙々と課題に取り組んでいる姿を見ると、子どもの成長の素晴らしさを感じます。受験という山を一つ乗り越え、その上で、また次の目標に向かって頑張る姿に感心します。私たちが何より喜ばしく感じるのは、受験が終わった途端、「もうあんな苦しい勉強はしたくない」と学ぶことを拒絶する子が1人もいないということです。とかく、教え込みの厳しい環境に置かれてきた子どもは、受験が終わった途端、学ぶ意欲をなくしてしまう現象が見られますが、今でも目を輝かせ、意欲的に課題に取り組む子どもたちの姿は、私たちの受験指導が間違っていなかったことを証明しています。

私が担当する「算数」は、3月の卒園までに10回の講座を設けています。これまでの学習では数式こそ使いませんでしたが、小学校低学年で学ぶ「四則演算」全てを具体的な場面で指導してきましたから、その経験を前提に、入学までにマスターさせようとカリキュラムを組んでいます。決して「早いこと」に重きを置いているわけではりませんが、入試対策として学習してきた内容がすべて基礎になっていますので、無理な学習を強要していくつもりはありません。特に「かけ算」や「わり算」は、2年生以降の課題ですから確かに難しいのですが、「一対多対応」「等分除」「包含除」の考え方を実際の場面で行ってきましたから、その経験に繋げ、抽象化された数式の世界に導いていこうと考えています。10回行う講座のカリキュラムは、以下の通りです。

<就学準備クラス「算数」カリキュラム>
第1回「たし算・ひき算って何?」 数の構成とたし算・ひき算
一対多対応・数の構成・数の増減復習/3つの部屋の数の構成/足だし式の練習/話を聞いて式を立てる
第2回「たし算・ひき算の計算法」 音読と聞き取り
数の増減・足だし式・3つの部屋の数の構成復習/暗算練習/プラス・マイナスの記号の理解とその計算法
第3回「隠れた数を探せ」 ブラックボックス・逆思考
逆思考の問題復習/10の構成/3×3方眼による数の構成(数字で行う)/魔法の箱を数字で行う/□を使った式(空欄を埋める)
第4回「かけ算って何?」 一対多対応とかけ算
一対多対応の復習/絵を使ってまとまりを作る練習/かけ算の式の立て方(一あたり量×いくつ分)/立式練習
第5回「わり算って何?」 等分や包含除によるわり算
等分除・包含除の復習/わり算の式の立て方/立式練習
第6回「かけ算って答えをどう出すの?」 かけ算の計算法
×式の意味/かけ算九九表/一対多対応暗算とかけ算/簡単なかけ算 5の段・2の段
第7回「わり算って答えをどう出すの?」 わり算の計算法
÷式の意味/等分除・包含除の意味/暗算練習とわり算の答え方
第8回「話を聞いて式を立て、解いてみよう」 文章題の基礎
短文を聞いて式を立てる/長文を聞いて式を立てる/立てた式を解いて答える
第9回「文を読んで式を立て、解いてみよう」 文章題の基礎
短文を読んで、式を立てる/長文を読んで、いくつかの質問に答える/文章題解決のコツ
第10回「10週授業の総まとめ」

今週行った第3回目の学習内容と子どもたちの取り組みをみると、受験対策としてやってきたいろいろな学習が本当に生きているなと感じます。今回の授業は、たし算・ひき算の計算が正確に早くできるように、暗算練習を兼ねた数遊び的要素の強い課題です。その中には受験対策として行ってきた、「方眼を使った数の構成」や、数の変化をとらえる「魔法の箱」などの学習が入っています。受験向けと違うのは、全て数字で行うという点です。

方眼を使った10の構成
(1) 縦3つのお部屋のの数を合わせても、横の3つのお部屋のの数を合わせても、「10」になるようにするには、空いているお部屋にいくつを入れればよいですか。その数だけ鉛筆でを書いてください。
(2) 縦と横に並んだ3つのお部屋の数を合わせると「10」になるように、空いているお部屋に鉛筆で数字を書いてください。



魔法の箱
(1) 魔法の箱の中を通ると、数が変わって出てきます。
最後に入れたものがいくつになって出てくるか考えて、その数だけ下のお部屋に鉛筆でを書いてください。
(2) 箱の中を通ると、あるお約束で数が変わって出てきます。
どんなお約束か考えて、1番下の?のついたお部屋に鉛筆で数を書いてください。
下の問題は、どんな数を入れたか考える問題です。最初の?のお部屋に入れた数を書いてください。

このように、以前学習したものをより抽象化させ、これからの学習に役立つトレーニングとして活用していけば、子どもたちは以前の学習を思い出しながら、スムーズに教科学習に入っていけるのです。「幼小一貫教育」の中味は、こうして同じ内容でつないでいくということでなければならないのです。受験対策として行ってきたことが、教科学習の基礎として生かしていけるからこそ、小学校受験が幼児期における基礎教育の最大の動機づけになるのです。4週目以降行う「かけ算の考え方」や「わり算の考え方」もこれまでの学習に関連づけて指導していきます。特に、「一対多対応」の考え方が土台になったかけ算の学習は、子どもたちにもとてもわかり易い、楽しい授業になるはずです。

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