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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

夏季講習会でみられた、子どもの学力の現状(2)

第349号 2012/7/27(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 夏季講習会でみられた子どもの学力の現状を前回に引き続きお伝えします。今回は、2日目と3日目の午前中に行われた「総合力完成講座」の子どもたちの様子です。

2日目は以下のような学習をしました。
(1) 関係推理(じゃんけんカードを使って)
A) じゃんけんによる関係推理
B) じゃんけんによる数のやりとり
(2) ペーパートレーニング
A) シーソーの三者・四者関係
B) 地図上の移動
C) 数のやりとり
D) 図形分割
E) 動詞(同音異義語)
F) 話の内容理解
(3) 数の増減・暗算トレーニング
暗算練習機を使って

2日目の課題について、子どもたちの取り組みの現状をお伝えしましょう。

  1. じゃんけんにおける三者関係はよくわかるが、話を聞いて相手の出した手を考える次のような問題になると、解らなくなる子が多い
    「太郎君と花子さんはじゃんけんを4回しました。太郎くんは、グー・チョキ・パー・グーと出しました。花子さんは最初の2回は勝ちましたが、後の2回は負けました。花子さんの出した手を順番にカードで並べてください。」
  2. おはじきを5個ずつ持って、1回勝つと負けた相手から1個もらえるという約束で3回じゃんけんし、その結果どちらが何個多くなったかを考える問題は、まだ間違える子が目立つ。同数からスタートして、相手から1個もらうと数の差が2個になるという感覚がまだ身についていない子が多い
  3. シーソーによる関係推理の中に、つりあいの課題が入ってくると難しくなる。モモ2個とリンゴ3個がつりあっている場面を見て、1個ずつならモモのほうが重くなるということが理解ができるかどうか。それが決め手になる
  4. お話を聞いて動く地図上の移動は、目で追いかけることを通してかなり解決できるようになってきた
  5. オセロのコマを裏返す数のやりとりは、実物のコマを使って実際にやってみることを通して理解させることが大事である
  6. 大きさの違う三角パズルの構成・分割は、大きい三角形をどこに置くか(発見するか)がポイントになる
  7. 同音異義語は、よく理解していたが、動詞だけでなく、名詞の同音異義語も練習することが大事である
  8. 1回だけ変化する「数の増減」は、暗算で十分対応できるようになった

つづいて、3日目は以下のような内容で学習をしました。

(1) 変化・移動(三角パズル・つみ木を使って)
A) パズルの変化
B) つみ木の移動
C) いくつつみ木を動かせば良いか
(2) ペーパートレーニング : 「太郎君の夏休み」という長い話を聞いて
A) 一場面の記憶
B) 地図上の移動
C) 数の増減
D) 鏡映像
E) 飛び石移動
F) 話の順序
(3) 10の構成・暗算トレーニング : サイコロ、暗算練習機を使って

3日目の課題について、子どもたちの理解の現状は以下の通りです。
  1. 三角パズルを使った形の変化とつみ木を使った形の変化については、ひとつずつ動かして変化させていくものであるため、よくできたと思う。どちらかというと、三角パズルの方が、1枚動かしてできる形が相当変化したように見えるため難しい
  2. つみ木を何個動かせば指定の形ができるかという問題は、出来不出来に大きな差がみられた。「変化」を読み取る、観察力が問われている
  3. 地図上の移動は、地図を伏せてお話を聞かせたが、橋を渡った後の最後の曲がり方で間違いが目立った
  4. 数の増減は暗算で解いていたが、時間的な順序において途中の数が抜ける、いわゆる「数の逆思考」の問題になると、かなり差が出た
  5. 湖に映る景色を描く問題は、良くできていた
  6. 旅人算的発想が問題の根拠にあると思われる「飛び石移動」の問題は、駒の動かし方と、作業を通して答えを導き出すトレーニングに差があるため、出来不出来の差が明確に見られた
  7. 10の構成も暗算でよくできているが、同じ数の組み合わせでも、7を見て3と答える場合と、3を見て7を答える場合とでは、やはり後者のほうが難しい。10の構成は徹底して行い、反射的に答えが出るまで練習することが必要。また10の構成については、2つの数の構成だけでなく、3つの数の構成についても、口頭でやってみることが望ましい。その際、最初の2つをお母さんが言ってあげ、最後の数を子どもに口頭で答えさせる。例えば、「3、4」と言い、最後の「3」を子どもに言わせるようにする

以上2日目と3日目の学習について、子どもの理解度の現状をお伝えしましたが、問題が難しくなったり、初めての問題に取り組む際の「聞き取り」能力には、相当差があるように思います。「何が問われているのか」「何を、どう答えたらよいのか」・・・問題の意図を聞き取る練習は、子ども本人に「どんな問題だったの?」と質問の意図を聞き返してあげることを通して行ってください。答えの根拠を説明させるだけでなく、問題の意図を説明させることも大事な学習のひとつです。

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