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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

夏季講習会でみられた、子どもの学力の現状(1)

第348号 2012/7/20(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 7月16日から始まったお弁当持参の4時間講習会「総合力完成講座」には大勢の子どもたちが参加し、秋の受験に向けて難問課題に挑戦しています。最近の入試で良く出される問題や、これまでの学習の中で多くの子どもたちにとって未解決の問題などを中心に、5日間の学習が組まれています。この夏季講習会でみられた子どもの学力の現状をお伝えし、この夏に解決しておかなくてはならない課題をできる限り具体的にお伝えしたいと思います。今回は、総合講座の1日目の学習課題に関する報告です。

1日目の課題の中で、子どもたちの理解度に差が出た問題は以下の通りです。

(1) 地図上の移動
(2) 四方からの観察と鏡映像の混合問題
(3) 話によって場面の数が変化した後の数の操作
(4) 逆しりとり
(5) 数の構成・暗算トレーニング

(1) 地図上の移動の問題は、話を聞き終わってから移動する場合と、話を聞きながら移動する場合の2つのパターンがあります。記憶の要素の強い前者と、とっさの判断が必要な後者の場合と、どちらが難しいか一概に言えませんが、子どもたちの取り組む様子から見ると聞きながら移動する問題の方に間違いが目立ちます。記憶の要素はないとしても、交差点の曲がり方をとっさに判断しなくてはならない分、難しいようです。特に、平面に描かれた地図の交差点を、上から入ってくる時の判断が正確にできるかどうかがポイントです。

(2) 四方からの観察と、鏡映像が同時に問われるのは次のような問題です。
鏡の前で男の子がポーズをとっています。
  • 鏡の向こう側にいる男の子から見るとどう見えるでしょうか。右から選んで青いをつけてください。(30秒)
  • 鏡にはどのように映るでしょうか。右から選んで青いをつけてください。(30秒)
この2つの見え方の違いがしっかりと区別できているかどうかが問題ですが、今の段階でも相当混乱しているようです。鏡の反射の問題をもう一度点検し、四方からの観察の問題とは違うということをしっかり身につけておいてください。

(3) ペーパーで数の問題が出される場合、一場面の絵を使ってさまざまな質問をする、いわゆる「数の総合問題」が増えています。昔と違って現在は、同じ場面を使いながら違った数の操作をさせる課題が基本になっていますが、もうひとつ最近の傾向として押さえておかなくてはならないのは、お話によって場面の数を変えてしまい、変わったその数を使って、新しい問題を解いていくというやり方です。例えば公園の絵を見せ、「男の子が3人帰りましたが、女の子が新しく2人来ました」と言った上で、男の子と女の子の数の違いを聞くというような問題です。ペーパーの場面は変わらないのに、操作する数自体が変わってしまった状態で問題を解かなければなりせん。聞き取りの要素がとても強い問題です。

(4) しりとりは、小学校受験においてはどうしてもはずせない重要問題の一つですが、子どもたちが普段言葉遊びとしてやっている「後ろにつなげる言葉遊び」だけでなく、しりとりのルールを論理的に理解し、前に戻っていくような問題も増えています。実際の試験にはいろいろなタイプの問題が出されますので、しりとりのルールを問題の中心に据えるような課題に取り組んでください。現段階でも、前に戻る「逆しりとり」「頭取り」は相当難しい問題であることには変わりありません。「逆しりとり」の理解は、絵カードを使って戻る練習をするのが良いと思います。

(5) 2月頃から本格的に行ってきた暗算トレーニングも最終段階を迎えました。数を内面化させ、頭の中で数を操作できるよう、時間をかけて練習してきましたが、すべての子どもの暗算能力が完成するのは、例年8月いっぱいはかかります。それだけ子どもにとっても大変な課題ですが、これを今のうちに完成させておくことは、受験のみならず、小学校以降の計算力を高める意味でも大事です。暗算練習にとって最適なのは、数の構成です。サイコロを振って出た目の数を見て、隠れたうしろの数を考えたりする課題です。指を使った数の操作は、スピードの点でも正確さの点においても「暗算」にはかないません。それだけでなく、「暗算」は数に対する敏感さを育てることになり、数概念の確立に大きく寄与します。

以上、1日目の学習課題に関する子どもたちの様子と学習ポイントをお伝えしました。ぜひ家庭学習の参考にしてください。

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