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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

夏季講習会でみられた、子どもの学力の現状(3)

第350号 2012/8/3(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 夏季講習会でみられた子どもの学力の現状をお伝えしますので、家庭学習の参考にしてください。今回は、4日目の午前中に行われた「総合力完成講座」の子どもの理解の現状と課題です。4日目の学習は次のような内容で行いました。

1. 一対多対応の応用(銀行ゲーム)
  • クマのコイン1枚で、ウサギのコイン2枚と交換できる
  • ウサギのコイン1枚で、カメのコイン3枚と交換できる
以上の約束をふまえて、いろいろ交換する
(1) クマのコイン3枚でウサギのコイン何枚と交換できるか
(2) カメのコイン9枚でウサギのコイン何枚と交換できるか
(3) クマのコイン2枚で、カメのコイン何枚と交換できるか

2. 置き換えの応用問題(動物村のパン屋)
  • メロンパン1個はドーナツ2個と交換できる
  • 食パン1斤はメロンパン2個と交換できる
  • ハンバーガー1個は、メロンパン1個とドーナツ1個と交換できる
この条件をふまえ、いろいろな交換をする
(1) ドーナツ4個は、メロンパン何個と交換できるか
(2) 食パン2斤は、ドーナツ何個と交換できるか
(3) ハンバーガー4個は、食パン何個と交換できるか

3. ペーパートレーニング
(1) シーソー(消去の考え方)
(2) 一対多対応の複合問題
(3) 対称図形
(4) 等分
(5) 重ね図形
(6) 話の内容理解

4. 暗算トレーニング
2段階変化する数の増減

授業は、最近多くの学校で出題されている「交換」の問題を中心に行いましたが、理解できている部分とできていない部分がはっきりわかりました。

1. 銀行ゲームの交換条件は、1種類のもの同士の交換です。このタイプの条件であれば、今の段階で理解できない子どもはほとんどいません。「クマのコイン2枚でカメのコイン何枚と交換できるか」という問題は、ウサギのコインを仲立ちにして考えなくてはならない問題ですが、これも良くできるようになりました。この問題が理解できれば、シーソーにおける「つりあい」の問題は解決できるはずです。ただここでしっかり練習していただきたいのは、くまのコインからウサギのコインを聞くだけでなく、ウサギのコインからクマのコインを聞く、あるいは、カメのコインからウサギのコインの数を聞く問題です。クマのコインからカメのコインを聞く問題はできても、カメのコインからクマのコインを聞く問題になるとできない子が多く見られるからです。

2. 動物村のパン屋さんの問題は、雙葉小学校で実際に出された問題ですが、この問題の難しさは「ハンバーガー1個は、メロンパン1個とドーナツ1個と交換できる」という交換条件にあります。つまり、1種類のものが2種類のものと交換できるという条件が難しく、入試においてはこの雙葉の問題がはじめてだったと思います。その結果「ハンバーガー4個は、食パン何斤と交換できるか」という問題になると、今の段階でも、クラスの三分の一ぐらいの子しか正解できていません。しかし、答えは間違っている子でも、あと一歩で正解に至ると思われる子がほとんどです。正解は「3斤」ですが、それ以外は、「2斤」や「4斤」と答える子がほとんどです。なぜ正解できなかったのか、2斤や4斤と答えた子にその理由を聞いてみると間違いの原因が良くわかります。間違えた子も「ハンバーガー4個は、メロンパン4個とドーナツ4個と交換できる」ところまではわかっています。問題はその後です。2斤と答えた子の多くは、メロンパン4個を食パン2斤に変えるところまでは良いのですが、ドーナツ4個を変えていません。また、4斤と答えた子は、メロンパン4個を食パン2斤に変え、ドーナツ4個をメロンパン2個に変え、そこで止まってしまっているのです。つまり、ドーナツから換えたメロンパンを、もう一歩進んで食パンに変えれば正解できるのに、メロン2個に変えたところで、それを食パンと勘違いしているため、「4斤」になってしまうのです。このように、2斤と答えた子も4斤と答えた子も、決して考える方向が間違っているのではありません。あと一つ進めれば正解に至るのです。この点をまず評価してあげ、その上で足りないところ指摘し、考えさせることが大事です。あと一歩で正解できる子がほとんどですから、9月末までにはこのタイプの問題は解決できると思います。

3. ペーパーで行った問題の内、現段階でまだ解決できていない問題は、「鏡に映った半分の形を考えて対称図形を完成させる問題」「差をつけて9個のイチゴを3人に分ける問題」「半分に折って重ねた時どんな模様ができるかを見本から選ぶ問題」の3つです。特に、鏡の問題も含めた対称図形の問題は、最近多くの学校で出題されていますので、よく練習してください。

4. 2回数が変化する「数の増減」問題は、10以内の数であれば、暗算でできるようにしておくことが大事です。最近の問題は、数の増減の問題に一対多対応の問題が複合されて出されてくる場合が多いため、最初の答えを紙に書いて作業しているようでは時間内に答えが出てきません。その意味で、数の増減問題は、暗算問題の中心に据えて練習すべき課題です。数の増減の問題は次のように変化し、複合問題化していきます。
(A)駐車場に車が6台止まっていました。そこにまた3台入ってきましたが、お買い物が終わった車が5台出ていきました。今駐車場には何台の車が止まっていますか?
この問題が一対多対応の問題と複合されると、次のように変化します。
(B)駐車場に車が6台止まっていました。そこにまた3台入ってきましたが、お買い物が終わった車が5台出ていきました。今駐車場に止まっている車のタイヤの数は全部でいくつでしょうか?
  (A)の問題は暗算で答えを出し、その答えに基づいて1台分・2台分・・・と4つずつを書き、4台分で終えて、その結果16とわかればよいのです。4台の答えを出すまでに時間がかかってしまうと時間内に処理できませんから、暗算能力を高めておく必要があります。

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