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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

基礎から応用へ

第338号 2012/5/11(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 昨年9月から始まった受験向け基本クラスの「セブンステップスカリキュラム」は、5月連休明けより、応用段階の「ステップ5」の学習に入りました。それに先立ち、5月5日と6日には、特別講習会「基礎学力総点検」を行い、子どもの学力チェックと弱点克服のための復習講座、および保護者対象の2つの連続講座を実施しました。また今年は新たに、集団での「学習相談会」を6日午後に実施し、家庭学習の進め方や現在壁にぶつかっている問題等につき、私が皆さまの質問に答えるという形式で行いました。

ひまわり会 合格カレンダー連続講座
5月5日(土) : 「基礎学力単元別チェック法」
1. 基礎段階の学習で、もう一度チェックしておくべき内容
2. 考え方の基本をしっかり身につける
3. 受験で大事な3つの課題をどう解決するか
4. 夏休みの活用法と応用学習

5月6日(日) : 「五月からの難問対策」
1. 小学校入試における難問とは
2. 問題を難しくするために、学校側はどんな工夫をするか
3. 領域別難問課題
4. どのような方法で、難問対策を取ればよいか

こぐま会では、受験に向けての学習計画をしっかりと立て、子どもの理解度や学ぶ内容の系統性を重んじて、「セブンステップスカリキュラム」を実施しています。

  1. 年中9月~年長4月までの8カ月間は、基礎学力を育成する期間 (ステップ1~4)
  2. 年長5月~7月までは、応用学力を育成する期間 (ステップ5・6)
  3. 年長7月~8月は、夏季講習会と総まとめの夏季集中授業 (ステップ7)
  4. 年長9月~10月は、入試のための実践トレーニング (入試直前予想問題授業)

以上大きく4つの期間に分け、それぞれの時期に行う授業の到達目標をしっかり掲げ、あせらず着実に学習が進められるような、また教室での授業と家庭での学習がうまくかみ合うような学習システムを構築してきました。

教科書もなく、何を学習すればよいのかの指針もないまま、小学校受験の対策をとろうとすると、どうしても実際に出された「過去問」トレーニングに目が向き、それをやるほうが手っ取り早く感じられます。しかし、はじめから「過去問」に取り組むことがどういうことかを冷静に考えれば、それは「間違い」だとわかるはずです。目標とすべき課題の解決を、最初の学習から取り入れたらどうなるか・・・子どもが理解できないのは当然です。その目標課題を自分の力で解くために、どのような学習を積み上げていけばよいのか・・・それをこそ、周りの大人が考えてやるべきです。しかし、残念ながら幼児教室の教師も含め、周りの大人たちは学習の手順がわからず、その結果として「過去問トレーニング」になだれ込んでしまうのです。年中の時期からペーパー学習に徹し、過去問に取り組ませるような教室は、教師に専門性がないと判断してまず間違いありません。1年間かけて学ぶべきことを、最初の段階から学習課題にするなど、子どもの発達に無知な素人のなせる業以外の何物でもありません。そんな学び方をしたら、子どもの正常な発達の芽をみすみす摘み取ってしまうことになります。こうした、私たちからみると指導の原則を外れた受験教育がまかり通る原因は、「受験は特別な教育だ」と考えている人たちが多いからです。しかし、現在入試で出題されている各校の問題を見てください。よく考え練られた問題、出題意図がしっかりした問題ばかりです。決して特別な教育で解決する問題ではなく、将来の教科学習につながっていく、基礎となる大事な問題ばかりです。その意味で、まともな幼児教育で身につけるべき課題ばかりです。これは、小学校入試に関する情報が公開されていないために起こる大きな混乱の一つです。こうしたことが起こらないよう、子どもが物事を理解していく道筋と、それぞれの問題が持つ思考の質を分析し、一歩一歩前進していけるように組み立てたのが、「セブンステップスカリキュラム」です。こぐま会が発行しており、今や、小学校受験の教科書的存在になっている「ひとりでとっくん365日」も、基本的にはそうした考え方で作った問題集です。

その考え方で進んできた「こぐまの教育」は、この5月から応用段階の学習に入りました。
これまでの学習で入試問題の8割方はカバーしていると思いますが、複合問題に象徴されるように、論理的思考力が多く求められる課題を集めたものが、ステップ5・6の学習課題になります。そうしたやや難しい課題も、ステップ4までに学習した基礎学力がしっかり身についてこそ学習可能です。逆にいえば、これから行う応用段階の学習でつまづくようでしたら、その基礎をステップ1~4までの内容に戻って点検する必要があります。そこに、「難しい問題に取り組ませて基礎を点検する」意味があるのです。

教育相談でお会いする外部生の方から、「今通っている塾では、ペーパーがあるだけで、カリキュラムもないし、何が基礎で何が応用かすらわからない。だから基礎を大事に・・・と言われても何をやって良いのかわからない・・・」といった相談をよく受けます。過去問だけをペーパーでやっているところは、カリキュラムもいらないし、基礎も応用も問題ないのかもしれません。しかし、そんなやり方で今の入試に対応する「考える力」が育つはずはありません。入試問題をよく分析し「何が求められているのか」を正確に把握すれば、そんな指導はあり得ないと誰もが感じるはずです。5月6日に行った「5月からの難問対策」のセミナーでは、実際に出された問題がどのような意図で出題され、どんな能力が求められているのか、また、子どもにとって何が難しいのかを具体的にひとつひとつお伝えしましたが、そうした分析を、教壇に立つ教師はしっかり身につけておくべきです。「ペーパーができないから」と叱り飛ばす前に、なぜ難しいか、それを解決するためにどんな学習が必要かを考えてあげてこそ受験指導の専門家のはずですが、そうしたことすらわからない、素人集団が余りにも多いのが実情です。ここが解決しなければ、受験教育の名のもとに、学習嫌いになってしまう子どもたちを大勢作り出してしまう結果になりかねません。

基礎から応用への橋渡しは、別な観点から言えば、具体的思考から抽象的な思考への移行期であり、また、具体物操作からワークブックへの移行期ということでもあります。今まで、できる限り体や手を使い、試行錯誤しながら答えを導き出してきた・・・その経験をペーパー課題に生かしながら、やっと相当量の過去問トレーニングが意味をなす時期になったということです。受験対策の最大のヤマ場になる夏休み前までに、入試で問われる「考える力」をしっかりと身につけるために、家庭学習の重要性が増す大事な時期になったということです。

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