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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

出発点としての入試を

第33号 2005/10/27(Thu)
こぐま会代表  久野 泰可

 神奈川の入試が始まり、受験生を持つ保護者の方は、子どもの健康管理に気を使うなど、毎日が緊張の連続だと思います。面接の結果も気になるところです。1日から始まる都内の入試に備え、学習面での総まとめにも気が抜けません。子育ての総決算としての入試を、悔いの残らぬようにむかえていただきたいと思います。そして、結果は冷静に受け止めてください。小学校入試の結果で、これからの人生のすべてが決まるわけではありません。入試そのものが、学力試験だけではありませんし、客観的な評価がどこまで下せるのかもあいまいです。希望通りの結果が出たとしても、また、残念な結果になったとしても、それは、終着点ではなく、ひとつの出発点にすぎません。その結果を踏まえて、これから始まる長い学校生活をどのように設計していくのかに、力を注いでいただきたいのです。

 試験場に子どもを送る側の教師として、年長の11月までに仕上げなくてはならない理不尽さをいつも感じています。月齢による、理解力の個人差にいつも悩みながら、あと1ヶ月あれば・・・・と思う場面に立ち会うことも少なくありません。月齢によって問題を変えたり、合格者の人数を割り振ったりする措置が以前は取られていましたが、今はほとんど月齢差が加味されていないのが現状です。試験を行う学校側も、本音を言えば、もっときめ細かに時間をかけて子どもたちの様子を見たいのに、限られた時間で結果を出さなくてならない今の入試のあり方に、満足しているわけはありません。

 子どもたちのこれまでのがんばりに対し、全員に「合格」というメダルが行き渡れば良いのに,限られた定員では、それは不可能です。それならば、この1年間の頑張りに対し、学校側から送られる「メダル」だけでなく、お父さん・お母さんが送る「金メダル」をぜひ用意してください。私は、先日の最終授業で、一人ずつ前に呼び、一年間のがんばりを思い起こしながら、一人一人違う文面で「修了証」なる「金メダル」を読んであげました。子どもたちにとって、何よりもうれしいのは、大好きなお父さん・お母さんから貰う「金メダル」のはずです。そして、その「金メダル」が、次のステップへつながる「金メダル」であってほしいのです。

 全員が希望校に合格できれば、これに勝る喜びはありませんが、希望がかなえられなかった時こそ、子どもに与える悪影響を少なくするために結果を冷静に受けとめ、周りの大人が子どもを支えなくてはいけません。子どもたちには、これからくぐらなくてはならない試練は数限りなくあります。ひとやま越せばまたひとやま・・・子どもたちの成長過程はその連続です。今回の入試結果はその意味で、ひとつの終着点でもあり、また出発点でもあるのです。そうであるなら、悔いの残る終着点にしないで、希望の持てる出発点として、その結果を冷静に受け止めていただきたいと思います。

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