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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

開校ラッシュで懸念されること

2005/10/20(Thu)
こぐま会代表  久野 泰可

 日経新聞10月14日(金)夕刊に「小学校受験事情」なる記事が掲載され、関西における有名私大の小学校開校ラッシュの件が報道されていました。来春、立命館小学校と同志社小学校が開校され、その後、2008年に関西学院大・2009年には関西大の附属小学校の開校が準備され、関西主要四私大すべてで小学校からの入学が可能になるということです.また、洛南高・同付属中や四天王寺学園も附属小を開設する方針であることも伝えています。少子化の時代に、「小学校からの一貫教育で、優秀な子どもを早めに確保したい」というねらいがあるようです。学力低下懸念の中で、良い教育環境の中で子どもを育てたいと願う、保護者の期待がそうした動きを支えているのだと思います。
 私立小学校の数は全国で百九十四校あるようですが、そのうちの三割近くが都内に集中しているようです。私がこの仕事にかかわった30年ほど前から見ると、本当に小学校の数も受験者数も増えました。

 こうした、流れの中で、小学校入試のための準備教育も、過熱してきました。しかし、私が見る限り、首都圏の入試の現状は、幾たびかの変遷を経て,きわめてまともな試験内容と、評価方法で実施されていると感じています。ここに至るまでには、さまざまな問題を克服しなければなりませんでした。「適切な入試問題であるのか」「試験の方法は適切であるのか」「合否判定はどうなされるか」・・・・その中でも一番大きな問題は,コネの問題でした。今も、くすぶり続けるこの問題は、中学校や高校の入試と違い、小学校独特の問題ですが、その背景には,「5~6歳児の能力を客観的に調べられるか?」という根強い疑問があるからです。しかし、知能テストの問題から始まって、ペーパー主義の時代を経て、いまや行動観察を最重要視するようになったその変遷過程では、学校側も塾側も子どもたちの正常な発達のために、相当な努力をしてきたはずです。正常化されるまで30年以上かかったという事実が、小学校入試のあり方の難しさを物語っています。

こうした、都内の試験の変遷を身をもって経験している私が、今一番心配しているのは、関西の小学校の開校ラッシュに乗じて、今まで幼児の教育など振り向きもしなかった、中高受験を専門としてきた塾が、ここはチャンスとばかり参入し、中学受験や高校受験と同じ発想で、準備教育を始めるのでないかということです。つまり、首都圏の小学校入試で経験してきた「ペーパー主義」をまた繰り返すのではないかという懸念です。それは、ペーパーの点数ですべて決着させようとする動きが出てくるのではないかということです。

受け入れる学校側も首都圏の入試のあり方を相当研究し、同じような形式のテストをしようと、工夫しているようです。しかし学校側の思惑をこえ、塾側が「合格のため」と称して暴走すると準備教育が過熱し、発達を無視した教育が横行し、幼児たちにとって、とんでもない不幸な事態が起こりうるということを懸念しています。

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