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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

問題が進化していくプロセス(2)

第327号 2012/2/10(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 前回、雙葉小学校の入試問題がどのように難しくなっていったかを、「一対多対応の応用問題」を取り上げて解説しましたが、もう一つ特徴的な問題の難易度比較をお伝えしましょう。私たちが教室で指導している学習単元では「位置の移動・飛び石移動」に当たる内容です。この問題も、雙葉小学校で出題される典型的な難問としてよく話題にしてきました。特に2010年度に出題された以下の問題は、小学校高学年で学ぶ旅人算がその根拠になっているのでないかと考えられる問題です。

2010年度 「飛び石移動」
カエルとウサギとカンガルーが飛び石を跳んでいきます。3匹は一緒に跳びますが、カエルは1つとばし、ウサギは2つとばし、カンガルーは3つとばしで進みます。

  • 3匹がそれぞれ2回ずつ跳んだとき、カエルとカンガルーの間に飛び石はいくつありますか。リンゴのお部屋にをかいてください。 (30秒)
    (正解 : 3個の
  • 真ん中の飛び石の絵を見てください。カンガルーがゴールに着いたとき、カエルとウサギはどこにいますか。カエルのいる場所に、ウサギのいる場所に×をつけてください。(30秒)
    (正解 : ゴールから6つ手前の飛び石に、ゴールから3つ手前の飛び石に×)
  • カンガルーはゴールまで行ったら、今度は折り返して戻ってきます。カンガルーとカエルが一緒に跳び始めると、戻ってきたカンガルーがカエルに会うのは、はじめから数えると何回跳んだときですか。その数だけブドウのお部屋にをかいてください。 (30秒) (正解 : 4個の

ところで、5~6年生の文章題に出てくる旅人算は速度の学習をした後で学ぶ内容ですが、幼児には速度の概念は難しいので、動物が1回に飛ぶ石の数によって早さを表しています。雙葉で出された最後の問題は、次のような旅人算を連想させます。

 太郎さんと次郎さんは、公園にある銅像の前まで行って帰ってきます。太郎さんは分速50メートルで歩いて行き、次郎さんは分速150メートルで走っていき、折り返して帰ってきます。家から公園の銅像までは、1,800メートル離れています。同時にスタートし、次郎さんが銅像まで行って家に戻ってくるときに太郎さんに会いましたが、それは2人が家を出発してから何分後のことでしょうか。

カンガルーが向こう岸に着いた時、他の動物はどこにいるかを考え、今度は向かい合って歩くとどこで出会うか、それは最初から何回飛んだ時か・・・という問題は、まさに上記のような典型的な旅人算で求められる思考法です。

この2010年度以前の2003年度と2004年度の入試にも、次のような飛び石移動の問題が出ています。

2003年度 「飛び石移動」
動物たちが飛び石を渡って、向こう側の森へ行こうとしています。
  • ネズミが今いるところから、飛び石を1つずつ6回跳んだらどこに着きますか。着いたところにをつけてください。 (15秒)
  • ネズミが6回で着いた場所に、ウサギが飛び石を1つとばしで跳んで行ったら、何回で着きますか。その数だけブドウのお部屋にをかいてください。 (20秒)
    (正解 : 4個の
  • リスが2つとばしで飛び石を跳んで、向こう岸へ渡ります。何回跳んだら着きますか。その数だけリンゴのお部屋にをかいてください。 (30秒)
    (正解 : 5個の

2004年度 「位置の移動」
エリちゃんとお兄ちゃんがジャンケンで、お山のゴールまでマス目を進みます。
グーで勝つと1つ、チョキで勝つと2つ、パーで勝つと5つ進めます。あいこのときは2人とも動けません。

  • 上の6回のジャンケンのように進んで、最後にエリちゃんの着いた場所に×を、お兄ちゃんの着いた場所にをかいてください。 (40秒)
    (正解 : 左から3番目のマスに×、右から7番目のマスに
  • エリちゃんは、2つ進むとゴールに着く場所に行きました。今いるところからその場所に行くには、どんな勝ち方をしたのでしょう。その組み合わせを下から選んでをつけてください。 (40秒)
    (正解 : 1番左、左から2番目、右から2番目に
    ※エリちゃんは、今いる×の場所から4つ進んだところ(ゴールの2つ手前)に行くことになります。ですからエリちゃんが、グーで2回、チョキで1回勝つ組み合わせが正解です。

2003年度の問題は、飛び石の基本を問う問題です。約束通りに飛べるかどうか、緻密な作業が必要になってきます。また翌2004年度の問題は、じゃんけんの結果を踏まえて動く課題です。約束をしっかり理解し、作業を通して答えを見つけ出さなくてはなりません。やさしいようで意外と難しい課題です。こうした問題を過去に出題し、子どもたちの反応を見た後、先ほど見ていただいた2010年度の飛び石の問題が出てくるのです。2003年度や2004年度の経験を生かし、より難しくなって登場します。そして、その後の2011年度は以下のような、お天気サイコロを振って出た動物による「動きの約束」を使って最後に着く場所を特定する問題です。やはり2010年度の問題に比べると易しく、2003年度のような基本問題に戻ったようです。

2011年度 「位置の移動」
動物たちがすごろくをしています。使うのはお天気サイコロで、晴れがでたら3つ、晴れのち曇りだったら2つ、曇りだったら1つ進みます。雨だったらお休みで、雷と雪が出たら1つ戻ります。

  • ネコ・タヌキ・キツネがサイコロを振ったら、上の絵のように出ました。それぞれ最後に着いたところはどこでしょうか。ネコが着いたところに◎、タヌキが着いたところに×、キツネが着いたところにはをかきましょう。
    (正解 : 下から8番目のマスに◎、下から2番目のマスに×、下から10番目のマスに

同じ学校の同じ学習単元の問題が、このように変化していることをよくつかんでおいてください。問題がどのように難しくなっていくか、またその過程でどんな能力が求められているのか。そこをしっかり押さえた学習が必要です。問題を難しくしていく方法や、そこで身に付けた思考法が将来のどんな学習内容につながっていくのか・・・・・難問としてくくられる問題には、しっかりとした理論的背景がある事を知れば知るほど、形式だけを教え込んで解かせる受験対策が何の意味も持たない事が良くわかると思います。

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