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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

考える力が求められる最近の入試問題

第328号 2012/2/17(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 11月から始まったばらクラスの授業もステップ3を終了し、いよいよ基礎段階の最後である「ステップ4」に入ります。入試問題の多くはステップ3と4に課題が集中しており、基礎段階の学習を終えると、過去問を使った学習が可能になってきます。授業方法も、具体物やカードを使った授業から、少しずつペーパー中心の内容に代わっていきます。この5カ月にも及ぶ基礎学習が意味を持つのは、5月以降の応用段階の学習に入ってからです。基本ができていないところでは、子ども自らが考え、問題を解決していくことはできず、多様化した最近の入試問題に対応することはできません。最近の入試問題は、各学校とも相当工夫し、子どもにとって「はじめての問題」がほとんどです。そのはじめての問題を、指示をしっかり聞きとって自らの力で解決していくためには、基礎がしっかりできていなければ可能ではありません。教え込みの教育やパターン学習が意味を持たなくなったのは、学校側の問題作成の意図が「考える力」を見ようとしてきているからです。では、具体的にどんな問題が工夫された問題、いわゆる新傾向の難問なのか。そこをしっかり押さえておかなくてはなりません。昨日行った、ひまわり会合格カレンダー連続講座の第3回目は、そうした受験生の皆さんの質問に答えるべく、「考える力が求められる入試問題」がどんな問題なのか、何が求めてられているのか、どこで子どもはつまづくのか・・・・・そうした視点でお話しさせていただきました。

今回はまず、何が難問かを具体的に知っていただくために、実際の入試問題を4問ほど解いてもらいました。前回のコラムで紹介した「飛び石移動」「交換」「一音一文字」「話の内容理解」の4問です。皆さんかなり苦労していました。何が大変かというと、子ども同様指示の聞き取りです。線を引いたり、メモしたりすることに慣れてしまった大人は、1回の聞き取りだけで問題を解いていくことが難しいのです。その点に関しては、子どもの方が優れているかもしれません。また内容的には、飛び石移動の問題が、実は発想の根底に「旅人算」があること、交換条件の中に、1種類のものが2種類のものと変えてもらえるという条件が問題を難しくしていること、そして子どもたちはどのように壁を感じ、それを乗り越えていくのか・・・・・そんな話をしました。そして、そうした問題に共通する問題の難しさを、学校側はどのように工夫しているのか、つまり「難問化させる方法」を分析しました。学校側が問題を難しくする方法は以下のようにたくさんあります。

(ア)指示を複雑にする
(イ)場面を見せないで発問する
(ウ)時間制限をきびしくする
(エ)余分な要素を入れる (しりとり・図形構成等)
(オ)場面の数を多くする (シーソー等)
(カ)作業で解かせる (難問と言われるものの多くがこのタイプ)
(キ)お話によって場面の数を変える
(ク)回転の要素を入れる
(ケ)視点を変えて質問する (数のやり取り・関係推理)
(コ)いろいろな場合を考える (場合の数として)
(サ)小学校高学年の文章題で求められる思考法を易しく問う
植木算・旅人算・消去算・ペントミノ

こうした手法を用いて、同じ問題でありながら難易度を高めていくのですが、問題そのものが難問化しやすいものを領域ごとに整理し、具体的な問題を紹介しながら入試の実態をお伝えしました。

<領域別難問表>
領域難しいとされる課題
未測量シーソー / 関係推理 / 量の保存 / 逆対応
位置表象四方からの観察 / 地図上の移動 / 回転位置移動 
一対多対応の応用 / 数のやりとり / 数の増減 / 逆思考
図形形の変化(平面・立体) / 立体模写 / 回転図形 / 対称図形(鏡映像を含む)
言語一音一文字の応用 / 話の内容理解
その他理科的常識問題 / 推理問題 / じゃんけん・しりとり・折り紙を使って

具体的な入試問題をしっかり分析し、そこで求められる「考える力」が何なのかを知っておくことは、家庭学習の進め方を考える意味ではとても大事なことです。また、最近はそれぞれの学校の傾向のみならず、入試全体としての新しい傾向の問題が存在します。新しい問題が、他校に波及する速度が高まっている現在の入試を勝ち抜くために、受験する学校の過去問だけでなく、小学校入試全体で今テーマとなっている新しい問題をしっかり学習しておかなければ、十分な対策とはいえません。新しい入試問題づくりをリードしているのが、雙葉小学校と筑波大学附属小学校の2校であることは間違いありません。この2校の問題は、受験するしないに関係なくやっておく必要がありますが、本格的には5月連休明けからで十分です。教え込んで解決する問題ではないからです。基礎をしっかり固め自分の力で解いていかなければ何の意味もありません。

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