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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

幼児教育が注目される日が必ずやってくる

第275号 2011/1/7(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 昨年OECD(経済協力開発機構)の学力到達度調査で、上海がすべての科目(3科目)でトップをとったことが報道され、話題になりました。また、日本の新しい指導要領に基づく教育が何年間かの移行措置を終え、今年4月から始まります。ゆとり教育で先送りされた学習内容がまた復活し、学力の立て直しに号令がかかり始めました。韓国や中国のような東南アジアの国々の教育分野における成長には目覚ましいものがあります。人材作りの大きな柱として教育振興が叫ばれ、過去のアメリカにおいて、スプートニク・ショック後に科学教育の現代化が推進されたように、国家の方針に沿った教育施策が結果として学力を押し上げることは間違いありません。日本もかつて、人づくりの要として教育が重視され、また、良い会社に就職するには良い大学に行かなくてはだめだという学歴社会の中で「受験戦争」が激化し、社会問題になったこともありました。そういう時代をくぐり、学力だけが問題ではない、競争させて順位をつけるのはよくない、良い会社に入っても幸せになれない・・・そうした生きる価値観の多様化によって、学力問題の受け止め方もさまざまになりました。

私がこぐま会での実践をもとに開発した「KUNO メソッド」が今、上海で注目を集めています。すでに4つの幼児教室が稼働し、そのプログラムの優秀さが認知され始めています。上海では小学校受験はありませんが、学力をつけて将来に備えたいと願う人たちが幼児期の教育を支えています。ひとりっ子政策の中で子どもの将来のことを考え、「KUNO メソッド」の教室に2歳の段階から大勢通ってきています。私もその現場に立ち会いましたが、ご両親の教育にかける熱心さには驚きました。受験があるから教室に通うのではなく、幼児期の基礎教育の大切さを認識しているからこそ、小さいうちから子どもの教育に投資しているのです。形式だけを教え込む「○○式」の学習は意味のないことを保護者が良く認識しています。だからこそ、私が講演をするたびに極めて具体的な指導法に関する質問が飛んできます。論理的な思考力・考える力をどう育てるかを真剣に考え、それに見合う教育プログラムを探しているからなのでしょう。少年宮で課外に行われる教室でも、幼児を対象とした「論理育成教室」があるくらいですから、その熱心さがわかります。そうした土台があるからこそ、今度の学力調査でトップを独占するといった結果につながっているのです。土台がしっかりしているからこそ、上級校でその成果が表れるのです。

振り返って日本の幼児教育の現状を見てみると、東南アジアの諸国から見て異常に映るくらいのんびりしています。「遊び保育は大事です。しかし遊び保育だけでは小学校の教科学習につながりません。」私が30年前からこう言い続けてきたことが、最近やっと認められるようになりました。幼稚園・保育園の理事長や園長が集まる席で講演すると最近は興味を持って聞いてくれます。知育を毛嫌いしてきた日本の幼稚園や保育園自身が、このままではだめだということにやっと気付き始めたといえるでしょう。私が40年近く現場に張り付き、子どもたちの理解度を見ながら積み上げてきた「KUNO メソッド」が、少しずつではありますが日本の幼稚園や保育園でも受け入れられ始めています。さまざまな問題を抱える日本の教育ですが、今後必ず「幼児期の基礎教育」についての議論が盛んになっていくはずです。劣悪な環境に置かれていた日本の「幼児教育」に光があたり、注目される日は必ずやってくると思います。詰め込み式の英才教育や受験教育ではなく、真に将来の学習の基礎をつくる「教科前基礎教育」「事物教育」「対話教育」が必要となる日が来ることを確信しています。

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