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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

物事に働きかける経験の大切さ

第133号 2007/12/28(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 こぐま会は、創立以来「事物教育」を指導理念として掲げ、体や具体物を使った授業をすべての基礎に置き、その上でカード操作やペーパートレーニングを行ってきました。それが子どもたちの発達の順序に一番適していると考えているからです。それはまた、教科前の基礎教育だけでなく、小学校受験を目指す子どもたちの指導方法としても一番有効であると考え、徹底して行ってきました。

そうした事物体験をしないで、はじめからペーパーを使った学習では、本当の基礎学力は身につきません。そのことを20年以上前からことあるたびに主張してきました。そのせいもあってか、私たちの指導法に共感し、最近では受験を目指す幼児教室においても、ペーパーを先行させた授業は少なくなってきたようです。それぞれの教室のホームページを見ると、「ペーパー学習の前に事物経験をさせます」という塾が増えてきました。このことは、小学校受験を目指す子どもたちにとって、とても良い教育環境ができつつあるということです。実際の試験でペーパー試験が少なくなってきているからではなく、幼児期の基礎教育を実りあるものにするためには、事物教育を土台とした指導がどうしても必要なのです。

なぜでしょう。それは、子どもたちの認識能力は物事に働きかけることを通してしか身につかないからです。言葉で教え込んで理解させても、すぐに忘れてしまいます。物事に働きかけることによって、物理的法則を体得するだけでなく、物と物との関係を自らつかむことによって、学力の基礎ができあがるのです。自分の体を介在させない物事の認識は、学力として定着しないことを、教室での指導経験を通してたくさん見てきています。

幼児期の子どもたちの特性からくる指導法という視点だけでなく、人間が物事を理解していく道筋を考えてみれば、事物教育が基礎教育の方法として一番ふさわしいのは当然と言えます。その「事物教育」が受験教育においてもこぐま会の専売特許でなくなりつつあるということは、私たちの主張が受け入れられたということです。ペーパーを主体にしない私たちの教育について、長い間「こぐま会の指導はやさしすぎる」と批判してきた人たちに、この事実をぜひ知っていただきたいと思います。私たちが掲げる「事物教育」や「対話教育」の方法が、受験対策においても一番有効な方法であることは、毎年の合格実績を見ていただければ、十分納得していただけると思います。

家庭学習において、私たちが手作りで用意する具体物教材をすべてそろえるのは困難だと思います。しかし、多くの会員の皆さんは、教室での授業に合わせて、家庭学習においても相当工夫され、具体物を用意して学習しているようです。すべての皆さんがそのようにはできないと思い、それに代わるものがなんとか用意できないかと考え、この11月から新しく、ひとりでとっくん365日に合わせた「おけいこカード」を作り始めました。具体物を使った経験の後、個別作業として行っている「カード操作」による試行錯誤を、多くの皆さまに実行していただこうと、今年1年をかけて開発していきます。保護者の方々にも少し手伝っていただかなくてはならないこともあり、少々面倒な点もありますが、私たちの教室での経験から生まれたカード教材ですから、きっと子どもたちも楽しく取り組んでくれるはずです。ペーパー学習の前にぜひ活用してください。

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