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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

論理を育てる教育は幼児期から

第132号 2007/12/21(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 12月5日の新聞は、経済協力開発機構(OECD)が昨年実施した「国際学習到達度調査」(PISA)で、日本は前回に引き続き順位を下げたことを報じています。参加57カ国の高校1年生に対し行った、「科学的応用力」と「読解力」および「数学的応用力」についての結果を分析していますが、日本の高校一年生は、科学的応用力で6位・数学的応用力では10位、読解力にいたっては15位と順位を下げています。近隣諸国の同世代の中では、最低ランクを記録しています。これだけ教育熱心な国なのになぜでしょう。

こうした学力低下の原因を「ゆとり教育」の結果と見るのは、一面的で、正しくないと思います。なぜなら、「考える力の養成」と「ゆとり教育」は相反するものではないからです。ゆとり教育が問題なのではなく、それ以前から行ってきた、受験教育を含めた日本の知識重視の教育のあり方に問題があると考えるべきです。「読み書き計算」に象徴される、基礎学力のとらえ方を、教える側も考え直さないと、この問題はひとつも解決できないと思います。計算が速い、漢字をたくさん覚えている、知識が豊富である・・という学力観と「自分で問題を見つけて、解決できる力」の育成という学力観のずれを、現場の教師たちが深刻に受け止めない限りこの問題は解決しません。韓国や中国・香港の教育関係者が、こぐま会の教材に注目するのは、「考える力」を養成する教材を求めているからです。こうした国々では、これからの教育が進むべき方向性をきちんと見据えて、それを幼児期から実施しようと真剣に考えているのです。

私は、12月10日から4日間香港に出向き、現地の日本人幼稚園で授業や講演会を行いました。来年春から始まる、現地幼稚園での「KUNOメソッド」による授業に備え、子どもたちの学力調査と先生方への研修を兼ねたモデル授業、母親への授業内容の説明を行ってきました。

香港は今回の学力調査で、3項目すべてにおいて上位3位以内に入っています。その香港で生活する日本人は、言語の問題や帰国時の学力の問題等に不安を持ちながら、まわりの動きに刺激され、子どもの教育について真剣に考え、取り組んでいます。母親を対象とした講演会で、「こぐま会」で行っている事物教育を具体的に紹介したところ、大変興味を持たれ、受験情報を含めて個別にたくさんのご相談を受けました。幼児の場合一番深刻なのは「言葉の教育」のようです。例えば、お母さまが日本人でお父さまが英語圏の方などは、日本語と英語の習得と、言語を使う論理的思考力の育成をどうしたらよいのか、相当悩んでいる様子でした。

私は、幼小一貫教育の必要性を具体的に説き、「事物教育」と「対話教育」を幼児期から実践すべきだということを強調しました。参加された保護者の方も、実際に教育に当たる先生方も新しい発想の「教科前基礎教育」に大変興味を持たれたようでした。

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