ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「今何を学習すべきか」

その9 位置表象の応用 四方からの観察

2005/08/18(Thu)
 今回は、「四方からの観察」をテーマにした教材について見ていきたいと思います。

 「四方からの観察」は、ひとつのものをいろいろな方向から見たときにどのように見えるか、その場所に行かなくても考えられるかどうかを見る課題です。「幼児期の思考の特徴は、知的自己中心性である」といわれています。これは、ひとつのものの見方に固執してしまい、なかなか観点が変えられないことをいいます。この「四方からの観察」の課題は、こうしたことから脱中心化して、他人の観点に立っても物を見られるようにすることです。つまり、この課題は論理的思考力を身につけるのには、絶好の教材なのです。

 「ひとりでとっくん21 四方からの観察」 の中に、次のような問題があります。(図1)
(図1)
(図2)

 この問題は、机の上に乗っているサイコロとグラスを、向こうにいる女の子が見たらどう見えるかを描く課題です。この課題は、何が難しいのでしょう。それは、目の前に見えている見え方を無視して、 反対側に行ったときのことを考えなくてはならないからです。そこにはかなりの抽象性が必要とされます。ここでは、左側に、サイコロが置いてあり、右側にはサクランボの入ったグラスがあります。この関係性を無視して、向こう側にいる子の立場でものを考えなくてはいけないことがここでの難しさです。かなり理解が進んできて、向こう側から見ると左右関係が反対になることがわかってきている子でも、グラスを左側に、サイコロを右側に描いても、さくらんぼの柄の向きをこちらから見えたままの右向きに描いたり、サイコロの目をそのまま三と描いてしまうこともあります。これは、まだまだ論理的に考えていく力が不十分なため、現実場面に目を奪われてしまうからなのです。しかし、こうした試行錯誤を繰り返し行っていく中で、論理的思考力は身についてくるのです。


 この課題はかなり四方からの観察の学習が進んだレベルの問題です。はじめは、いろいろな方向から見たら、ものが違って見えることを実際に意識することから始まります。授業では、中央の机にヤカンを置き、その四方に子供たちを座らせて、そこから見えたとおりにヤカンを描くことから始めます。その絵をみんなの前に貼り、どうしてひとつのヤカンを描いたのに、こんなに絵が違うのかを考えさせます。ここで、描く場所が違うからだ、ということを考えられればよいのです。 その後、自分以外の方向から描いた絵をそれを描いた場所にもって行き、本当にそう見えるかどうか確認させます。

 さらに、今度はヤカンを中央において、その四方にいすを置きます。そして、四方から描いたヤカンの略図を使って、次のような順序で授業を展開します。

(1) 1枚の絵を持ち、それがどの場所から描かれたのか、その場所を探す。 (2) ヤカンの位置を動かし、(1)の場所でどのように見えるかカードを探す。 (3) その場所にいかずに、いろいろなところからのヤカンの見え方を考える。 (1)、(2)、(3)の中では、(3)の課題が最も難しいです。ここでは、目の前に自分の方向から見えているヤカンがありますが、それを無視して、指示されたところにいるつもりになって、カードを選んでいきます。その際には、体を動かして、指示された椅子に座っているつもりにならなければなりません。ここでこのように、頭の中で想像し、体を使って考えていくことが、その後の抽象的に物事を考えていくことの基礎になるのです。

 授業の中ではこのようにヤカンとその略図を使いましたが、四方からの観察の練習は、ご家庭でも出来ます。ヤカンなどの左右関係がはっきりしているものを実際に子どもに四方から絵に描かせて、それを使って行ってもいいですし、最近はデジタルカメラという便利なものもありますので、ひとつのものを四方から撮影して、その写真を使って行ってもいいでしょう。

 それから最近は、上から見たらどう見えるかという課題も出題されています、そこで、四方だけでなく、上からの写真も使って練習なさるといいでしょう。とにかく、四方からの観察課題については、論理的な思考力が必要となります。したがって、位置の問題だけでなく、数の難しい問題が出来るようになると、この課題が出来るようになってきますので、是非そうした側面の練習も行って下さい。

 さらに、もっと難しい問題については、「ひとりでとっくん92 四方からの観察2」 の中にあります。図2は、どこから見てもそのように見えないものをさがす問題です。この課題は、「ひとりでとっくん21 四方からの観察」 を十分に学習して、四方からの観察の考え方をしっかりと身につけてから挑戦して下さい。

PAGE TOP