ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

入試問題を難しくする「逆思考」と「回転」

第830号 2022年9月30日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 知能テストの問題から始まった小学校入試。この50年間変遷を重ねて、現在の「考える力」を問う問題に発展してきました。問題づくりをする試験担当の先生方も、他校でどんな問題が出ているかを調べ、時間をかけて検証しているはずです。落とすための試験ではなく、本当に子どもの力を見るにはどんな問題が適切か、難しすぎてもいけないことは十分承知しているはずですし、やさしすぎても正当な評価ができないと考えていると思います。だからこそ、ある学校で出された新しい発想の問題が他校に波及していくのでしょう。そうしたことはこれまでたくさん見てきました。
  1. ある学校で、ホットケーキの3等分が出されると、それまでは2等分・4等分が主流だった量の等分において「水の3等分」「ひもの3等分」が出されるようになった
  2. しりとりが主流だった「一音一文字」の応用課題の中で、「下から2番目の音で始まるように言葉をつなぐ」問題がある学校で出題されると、翌年から「上から3番目の音」「真ん中の音」でつないでいく問題が出るようになった。それどころか、言葉の最初の音を組み合わせて、新しい言葉をつくる問題(言葉づくり)が、上から2番目の音や真ん中の音で作る問題に発展していった
  3. 飛び石を移動する問題がある学校で出されると、約束を変えていろいろな学校に波及し、将来学ぶ「旅人算」の考え方を問う問題がさまざまな形で出題されるようになった
  4. それまでの「四方からの観察」は具体物がほとんどだったが、ある学校で、積まれたつみ木を四方から見たときの見え方を問う問題が出されて以降、ほとんどの学校の問題がつみ木になり、今や「つみ木を使った四方からの観察」が主流になってきている
  5. 考える力を問う問題として「法則性の理解」が頻繁に出され、「観覧車」「魔法の箱」「並び方の法則性」の理解を求める問題が増え始めている

こうした形で小学校入試の問題が難しくなっていった経緯があります。訓練すればできてしまう問題は極力避け、子ども自身が試行錯誤しながら身につけてきた本当の力を見ようとしています。入試で出題される問題の意図をいかに読み取り、予想できるかは、子どもたちを送り出す私たちの力量にかかっています。単に難しい問題をたくさん訓練すればいいわけでもなく、また、過去問を繰り返し10回やれば合格できるものでもありません。学校側は明確な意図をもって問題を作っているわけですから、それを自分の力で解けるような系統的な学習が必要です。早いうちから難しい問題に取り組ませる学習では解決しません。情報を集めるだけでなく、情報を分析する力が塾側にないとだめです。自分たちの力で問題づくりができなければ、号令をかけて難しい問題を機械的に解かせるだけの指導しかできません。暗記主義の教育の時代は終わりました。小学校受験も例外ではありません。合格さえすればそれでよしの受験教育は、子どもの将来を大人の都合で奪い取ってしまうことになりかねません。そんなやり方はもう終わりにしなくてはなりません。

ある学校の新出問題が、他校に波及し一般化していく流れは、これからも続いていくでしょう。その前提で、最近の問題を難しくしていく要素は何なのかを知っておく必要があります。私がいろいろな学校の問題を分析してみたところ、「逆思考」と「回転」がそれにあたるということがわかりました。入試前の最後のまとめに、この2つの視点を重視したトレーニングが必要です。

  1. 逆思考に関する問題は、これまでは残ったジュースを見て飲んだジュースの量を系列化したり、量の違う水に同じ数の角砂糖を入れたときの甘さを考えたりする「逆対応」の問題が中心でしたが、最近ではいろいろな領域に広がってきています。(主な具体例はコラム825号で解説しています)
    1. しりとりを最後から戻って行う「逆しりとり」
    2. 出てくる数を見て、入れた数を考える「魔法の箱」
    3. 途中の数が抜けている「数の増減」
    4. 到達したところから戻って、出発したところを特定する「方眼上の位置移動」
    5. 出来上がる形を考えるのではなく、出来上がった形から何を重ねたかを考える重ね図形
    6. どこに着くかではなく、誰が着くかを考える「観覧車」

  2. 回転に関する問題の典型は、昔から観覧車とそれに関する「ルーレット」「回転食卓テーブル」でした。それは、法則性の理解としてくくられますが、回転そのものが問題になるケースも増えてきました。
    1. 歯車の回転
    2. 回転位置移動
    3. 回転図形

回転を頭の中でイメージするのは、大変難しいものです。その難しい要素をいろいろな課題にからませて出題し、問題を難しくしています。イメージする力を身につけるためには、まず実際にものを回転させる経験が必要です。答えを導き出す要領だけを教えても、それは本当の意味で「回転」を学んだことにはなりません。試行錯誤して答えに到達する経験がどうしても必要です。

逆から問いかけたり、回転の要素を絡めたりする問題の対策は、毎日行うペーパートレーニングで、準備された質問をしてそれで終わりにしないで、「この問題を逆から問いかけたらどんな問題になるだろうか」「この問題に回転の要素を入れたらどんな問題になるだろうか」と考え、既存のペーパーを使っていろいろな角度から問いかけるのが一番良い練習方法だと思いますので、ぜひ実行してください。


 重版決定!! こぐま会代表 久野泰可 著「子どもが賢くなる75の方法」(幻冬舎)

読み・書き・計算はまだ早い!

家庭でできる教育法を一挙公開
子どもを机に向かわせる前に実際の物に触れ、考えることで差がつく。
  • 食事の支度を手伝いながら「数」を学ぶ
  • 飲みかけのジュースから「量」を学ぶ
  • 折り紙で遊びながら「図形」を学ぶ
  • 読み聞かせや対話から「言語」を学ぶ
お求めは、SHOPこぐまこぐま会ネットショップ 全国の書店・各書籍ECサイトにて

PAGE TOP