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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

「考える力を求める入試問題(6) 法則性の理解」

第715号 2020年3月27日(金)
こぐま会代表  久野 泰可

 今回は、常識問題や多くの領域にわたって出題されている「推理」の問題を集めた「生活 他」領域の中から、考える力が求められる「法則性の理解」に関する入試問題を紹介したいと思います。
これまで「法則性の理解」として括ってきた内容は、大きく分けて「1. 図形系列」「2. 観覧車(回転推理)」「3. 魔法の箱」の3つでした。「図形系列」は並び方の法則性を発見する問題、「観覧車」は回転推理の問題、「魔法の箱」は変化の法則性を発見する問題です。入試問題を分析する前に、まずそれぞれの典型問題をご覧ください。

1. 図形系列
  • いろいろな形がお約束通りに並んでいます。空いているお部屋の中には、どんな形が入ればよいでしょうか。よく考えて、エンピツでかいてください。

2. 観覧車
  • キリンが1番下に来ると、サルは今誰がいるところに行きますか。赤いを右のお部屋にかいてください。
  • ウマが1番上に来ると、パンダは今誰がいるところに行きますか。青いを右のお部屋にかいてください。
  • クマがウマのところに来ると、今クマのいるところには誰が来ますか。緑のを右のお部屋にかいてください。

3. 魔法の箱
  • どんな魔法かよく考えて、最後に入れたものはいくつになって出てくるか、右下のお部屋にエンピツでをかいてください。

この3つは今でも「法則性の理解」の中心問題ですが、最近はそれに加え、学校側が相当工夫し形を変えたいろいろな問題が出されています。2020年度入試の問題をご紹介しながら、それぞれで求められている「考える力」をお伝えします。

4. 図形系列の応用
  • トラ、サル、ウサギが決まった順にならんでいきます。サルが9匹ならんだとき、ウサギは何匹ならんでいますか。その数だけ下のお部屋にをかいてください。

この問題は、トラ・サル・サル・トラ・ウサギで一区切りの並び方ですから、その中に同じものが登場する「5」の繰り返しと考えられます。この約束で「サルが9匹並んだ時ウサギは何匹並んでいますか」という問題を作業を通して答えを出さなければなりません。「5」の中には、サル2匹・トラ2匹・ウサギ1匹がいますので、サルが9匹ということは、「5」の繰り返しが4回あった後、トラ・サル・・・とここで9匹目のサルが出てくることになります。ここからウサギの数を考えると、4回の繰り返しの中にウサギは4匹登場し、その後はトラ・サルで終わるため、ウサギの数は変わらず答えは4匹ということになります。こうした数の問題を絡めた応用問題も登場してきました。

さて、次は並び方を問う問題ですが、方眼の中を2つの形がどのように移動しているか、その法則性を考える問題です。最近はこうした形式が増えています。

5. 法則性の理解
  • それぞれの形がお約束通りに動いています。お約束を見つけてどうなるかを考えて、1番右のお部屋に形をかいてください。

図形系列は一般的には1列に並び、その並び方を考える問題が基本です。ですから、空欄を埋める時には口ずさんで解くか、指送りで解くかの2つの方法が有効です。しかし、この問題のように方眼を使い、ある約束に従ってマス目を動く形の法則性を読み取って、最後にどうなるかを考える問題が増えています。一番上の問題では、はひとつずつ下へ、はひとつずつ右に動いています。一番下の問題では、は斜め右下へ、×は斜め左下に動いています。動き方の法則性をどう発見するかが問われています。

次の問題も回転の要素が入った系列問題と考えられます。

6. 法則性の理解
  • 上のお部屋を見てください。それぞれの形がお約束通りに動いています。リンゴとブドウのお部屋がどうなるかを考えて、下のお部屋にそれぞれ形をかいてください。

上の問題は、一つ一つを図形的に考えれば同じものを探して指送りしてできますが、4つの部屋の形がどのように動いているかを考えると、左回りにひとつずつ動いていることが分かります。目に付きやすいを見ればそのことがよく分かります。4回動いて元に戻ってくるため、最初と最後の形は同じになりますから、その次のりんごの部屋は左から2番目と同じになります。下の問題は、×は左回りにひとつ、は右回りにひとつ、そして◎時は右回りにひとつ動くという法則性をつかめば、ブドウの部屋がどうなるか分かるはずです。図形系列と回転推理が総合された問題で、こうした工夫された問題が今後増えることが予想されます。

次の問題は、観覧車に象徴される回転推理の応用問題です。歯車の問題は必ず出されるだろうと予想していましたが、2020年度入試で初めて出題されました。

7. 回転推理
上の絵を見てください。この2つの形は歯車のように回ります。今サルとブドウが隣り合っています。
  • 動物のお部屋が矢印の向きに1周してもとの場所に戻ったとき、サルと隣り合うものはどれですか。右から選んで青いをつけてください。
下の絵を見てください。この3つの形も歯車のように回ります。
  • 乗り物のお部屋が矢印の向きに1周してもとの場所に戻ったとき、右下の矢印のところには何がきますか。右から選んで青いをつけてください。

上の問題は、歯車の数で問いかけるのではなく、円周の長さと分割する数によって、1周回るごとに隣り合う果物と動物が変化していく問題です。この問題でいえば、動物は8回動いて元に戻り、果物は6回動いて元に戻ります。ですから、動物が1周回る間に果物はそれ以上回る(つまり8回動く)ことになり、サルと隣り合うものが最初に隣り合ったブドウではなくなるということになります。いくつ動いたかを考えるのは、観覧車の問題と全く同じです。観覧車と違うのは、動物が右回りになれば果物は左回りになるという関係です。回転する数と回転する方向が問われる課題で、それが難しさの原因です。

もうひとつ大事な問題があります。それは「魔法の箱」と呼んでいる課題です。箱を通過することによって何らかの変化があり、その変化の法則性を発見して、最後に入れるものがどうなるかを推理する問題です。多くの場合は数の変化ですが、時には形の変化だったり、色や位置の変化だったりといろいろです。2020年度入試では以下のような問題が出されました。箱を通過する代わりに、動物(の前)を通ることによって変化の仕方が決まっています。

8. 魔法の箱
上の絵を見てください。形がそれぞれの動物を通ると、あるお約束で変わって出てきます。(れい)のように、2回通ると絵のように変わります。
  • では、下のように形が動物を通るとどうなりますか。それぞれ形をかいてください。

ウサギとリスと猫の前を通った時、形がどのように変化するかを理解し、それぞれの形がどのように変化するかを判断する課題です。ウサギは真ん中の線が消える約束で、リスは縦のものが横になり、猫は中にもうひとつ周りと同じ形ができ・・・という約束を適用する問題です。下のように連続して動物を通過するものもありますので、一つ一つ区切って考え、約束を当てはめてください。

以上5つの問題を分析しましたが、やはり冒頭で説明したように、法則性の理解は「図形系列」「観覧車」「魔法の箱」の3つに集約されますので、ここをしっかりやっておくことによって、さまざまに工夫された問題に挑戦できるはずです。これら3つは考える力が相当求められ、時には作業能力が問われます。いろいろな問題があると思いますが、ぜひ繰り返し練習してください。

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