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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

3歳からの考える力教育

第59号 2006/06/02(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 このたび講談社から「3歳からの考える力教育」と題した本を出版させていただきました。
 私が35年間の実践活動を踏まえ完成させた「教科前基礎教育」の内容と方法を、できるだけ具体的にお伝えしようと考え、まとめた本です。小学校受験をめざす子どもたちの保護者の方々だけでなく、個人塾の先生や、幼稚園や保育園の現場で日々子どもたちの教育に携わる保育者の方々にも是非お読みいただきたいと思います。

 私たちが開発した「こぐまオリジナル教材」や「ひとりでとっくんシリーズ」問題集を、多くの方々に使っていただき、大変うれしく思います。最近では、幼稚園や保育園でも使っていただいていると聞き、作り手として、更なる内容の充実に努めなくては・・・と考えています。また一方で、私たちの意図した使い方とは違って、ペーパー教材だけを子どもに与え、それをトレーニングすることが「幼児期の知育」だと考えている方が、少なからずいると言うことも耳にして、そうした使い方の誤りをはっきりと指摘しておかなくてはならないと考えています。

 私は幼児期における基礎教育の方法は、「事物教育」と「対話教育」であると確信しています。事物に働きかけることを通して物事の関係を学び、また、考え方の根拠を言語化する努力を通して論理的思考力の土台を形作っていくと考えています。ですから、初めての課題を最初からペーパーだけを使って指導することは極力避けています。物事の本質をつかまないままのペーパートレーニングでは、教え込みになりがちだからです。生活や遊びの中で十分経験していることであれば、最初からペーパーのみの教育も可能ですが、物事に働きかける試行錯誤があってこそ、子どもたちは多くのことを自ら学び、論理性の土台を築いていくのです。可逆的な思考力の育成には、物事への働きかけが不可欠なのです。

 まず体を使って経験し、その経験をカードや教具を使って定着させ、最後にペーパー教材を使って点検したり応用力をつける・・・こうした指導の順序の中で、最後に使うペーパー教材を、前の二つの経験を排除して使うということは、私たちの考えている指導の原則から外れているのです。18年間かかって100冊の「ひとりでとっくんシリーズ」を完成させましたが、それだけ時間がかかったのも、子どもたちが具体物に触れ、物事をどのように考えるかを観察し、その考える道筋にあわせて問題を作成し、何回も指導の現場で使い、難易度を考え工夫してきた結果にほかなりません。

 今回出版した「3歳からの考える力教育」は、ペーパー以前の教育をどのように実行したらいいのかを、子どもたちの取り組む様子も踏まえながらまとめた本です。私たちが開発した教具や教材のもとになる考え方をお伝えしたくてまとめた本ですので、どうかそうした視点で、幼児期の基礎教育に携わる多くの皆さんに参考にしていただきたいと思います。

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