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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

今年の入試から何を学ぶか(2) 入試結果報告会

第511号 2015/12/18(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 12月13日(日)の午前・午後の2回にわたり、「2016年度 私立小学校入試結果報告会」を行いました。今年の入試に関する学校ごとの詳しいセミナーは、年明けの1月17日から順次行っていく予定です。今回は全体総括として、学力面・行動面・面接について今年の傾向をまとめてお伝えし、来年秋の受験に向けた対策の在り方をお伝えしました。私が担当した「全体総括」は、以下のような点でまとめました。

2016年度入試 総括メモ
1. 倍率は微増、しかし、実質倍率はほとんど変わらないと思われる

2. 入試の特徴は、全体として行動観察がより重視されている。しかし自由遊びとは違って、ある目的を持って何かを見ようとしていることがわかる
3. 非認知能力の視点から言えば
集中力・作業持続能力(やりぬく意思)・集団での協力関係(和)・人の話を聞く力(コミュニケーション力)等がレディネスとして重視されている
4. ペーパ―問題は各校かなり類似してきた。それだけ求める能力の観点がはっきりしてきたということ 。特に多いのが以下の内容である
A) 位置表象の問題がかなり増加した
B) 「一場面での数の総合問題」は、どこも重視してきている
C) 「じゃんけん移動」のような作業を伴う問題も増えている
D) 「話の内容理解」の質問が多様化している
5. 合否判定については、どんな子が合格したかより、どんな子が合格できなかったかを見ることで、学校側の意図がわかる。学力があっても合格につながらないのはなぜかを分析する必要がある。自分中心の振る舞いをしたり、人の話を聞く前に話し始めてしまうような子は合格できていない。他者の観点が入らないリーダーシップではダメ。一方で、集団活動の中で自己表現できない子も合格につながってない
6. これからの入試対策で大切にしてほしいこと
A) 自分で考え・自分で判断し・自分で行動する子を学校側が求めている。つまり、自立した思考・自立した判断・自立した行動ができる子がのぞましい。そのためには、母子関係を冷静に考えてみる必要がある。自立を促す子育てができているかどうかを振り返ってみる必要がある。学習面も、行動面も、合否のポイントは母子関係。放任も、過干渉もダメ。自立を促すための関係づくりが必要。
B) ますます重視されている他者への思いやりは、学習面における可逆的な思考や、視点を変えてものごとを考える能力と連動している
C) 「子育ての総決算」といった学校側の意図は、経験を豊富にするということだけではなく、親の子育ての仕方に警鐘を鳴らしたものと理解すべきである

子どもの自立を妨げている最大の理由は、受験対策を「特別な教育」だと見ているからです。型を教え込むことが受験対策だと思った瞬間から、厳しい先生役のお母さまと、それをじっと我慢してがんばろうとする子どもの構図ができ上がります。そこには、自立した思考や自立した行動が芽生えるチャンスはありません。「自立」が押さえこまれる要素が多分にあり、学校側が求めている方向とは全く逆の方向を向いてしまっています。皮肉なことに、母親が熱心になればなるほど、子どもから自立した判断、自立した思考を奪い取ってしまう母子関係ができ上がってしまいます。

小学校受験は、まともな幼児教育の結果として受け止めるべきです。特別な教え込みの教育が必要なのではありません。年齢にふさわしい幼児教育を実践する中で、学校側が求めている「自立を促す子育て」が、「合格」へとつながっていくのです。

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