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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

入試の現実を正確に知っていただくために

第509号 2015/12/4(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 今年の首都圏における私立小学校の入試もほとんど終了し、残すところ国立附属小学校の入試だけになりました。今年の入試がどのように行われたか、12月13日(日)に予定している「入試結果報告会」を皮切りに、年明け以降さまざまなセミナー等でお伝えしていくつもりです。正確な入試情報に基づいて、正しい準備教育に取り組んでいただきたいと思います。

最近では、学校側からいろいろな情報が出されるようになりましたが、これまでは入試に関する情報はほとんど未公開であり、根拠のないうわさ話で保護者の皆さまが右往左往されることがよく見受けられました。正確な情報を提供すべき幼児教室から間違った情報が意図的に流され、相当混乱した時もありました。公平性が求められる入試で不透明な話が出てくるのも、そうした受験をめぐる正確な情報が操作されているからにほかなりません。ペーパー試験の点数で合否が決まらない唯一の入試であることも、混乱に拍車がかかっているのかもしれません。

こぐま会では創立以来、大事な仕事の一つとして、入試情報を受験者の皆さまに正確に伝える必要があると考え、実行してきました。入試に関するセミナーも、入試情報誌の発行も、過去問題集の発行も、そうした想いが根底にあります。入試問題をはじめ、入試に関するさまざまな情報が学校側から公開されていない以上、自分たちで情報を集めるしかありません。入試当日から今日に至るまで約1カ月、職員総動員でこの情報収集の仕事に取り組んできました。その方法は、基本的には受験生からの聞き取り調査です。もちろん保護者の皆さまにもご協力いただくわけですが、基本は子どもたちからの聞き取りです。試験が終わった当日、帰りに教室に寄っていただき、試験内容に関する聞き取り調査を始めます。原則は子どものしゃべったことを書き記すことですが、過去の傾向を見てあらかじめこちらで問題を用意し、その問題が出たかどうかを確認する方法も取ります。極めて原始的な方法ですが、これしかありません。あとは、付き添った保護者の方に子どもがしゃべったことを書き留めてもらい、それを参考にすることもあります。ここで最大の問題は、試験当日1校だけでなく、複数校受験する場合も多いため、どの学校で出された問題かを間違えてしまうこともしばしばあるということです。こうした場合は、1人だけでなく4~5人の子どもたちから聞き取ったことを突き合わせ、全員が一致して報告してくれた問題を「実際に出された問題」として資料化していきます。

こうした地道な努力によって今年も情報を集め、11月28日(土)の夕方、職員一同集まって社内での報告会を行いました。学校ごとに決まった担当者から、学力試験・行動観察・面接の具体的な問題の報告があり、昨年度と何が変わったかの分析もしてもらいました。ここでの報告をもとに、入試結果報告会で使う資料が作成されていきます。こうした入試情報をなぜ公開するのかという質問を、ある雑誌の記者から聞かれたことがありますが、情報を隠して教室運営をするのではなく、情報を公開するのがこの仕事に関わる私たちの使命だと考えているからです。そのことによって間違った受験対策が糺されていくことこそが、子どもたちを守ることであり、一方で小学校受験がまともな幼児教育の動機づけになれば・・・と考えているからにほかなりません。

各担当者からの報告を聞いて、今年の入試に関して分かってきたことは、

  1. 各学校の最終受験番号を見る限り、志願者は前年より微増したところが多いが、試験当日欠席者が目立った学校が昨年より多かったようなので、実質倍率は昨年同様か、もしくは低くなったことも考えられる
  2. ペーパー問題の多くは、予想した通りであった。問題自体に目新しいものは多くはないが、過去において出された同じような問題でも、質問の仕方に工夫がみられる。つまり、新しい観点の問題よりも、最近他校で出された問題に変化を加えた問題が出されるケースが目立つ
  3. 試験の方法に大きな変化はないが、「話の内容理解」と「行動観察」に各学校の工夫が見られる
  4. 特に、行動観察の内容が相当工夫されていることがわかり、それだけ各学校とも重視していることがわかる。子ども同士の関わり方や協力の仕方が、以前より重視されている。この点は詳しく分析する必要がある
  5. 面接の内容や方法が工夫され、特に父親の役割が重視されている。子どもとのやりとりや振る舞い方がポイントになるケースが増えた
  6. 相変わらず、最近の傾向の一つとして、指示をしっかり聞き、集中して作業して、答えに導く力が重視されている

こうした情報をより詳しく分析し、12月13日(日)に行われる入試結果報告会とそれに続く学校別の問題分析会、そして入試資料集の発行へとつなげていくつもりです。

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