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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

合否判定をめぐって

第36号 2005/11/17(Thu)
こぐま会代表  久野 泰可

 首都圏の私立小学校の入試もほとんど終了し、これからは二次募集の私立と国立附属小学校の入試が始まります。今年は、関西で同志社と立命館の小学校の入試が初めて実施され新聞紙上を賑わした年でもありました。こぐま会では、首都圏の小学校を中心に、今年行われた入試の全貌を明らかにしようと、受験した子どもたちの聞き取り調査をほぼ終え、その分析に取りかかっています。詳しくは、12月8日の「私立小学校分析セミナー」でお伝えすることになりますが、出題傾向や合否判定の仕方、補欠合格者の出し方に変化があるようです。変化の背景に何があるのか。できるだけ正確に分析しなくてはなりませんし、それを踏まえて、来年受験される方は学校選択や学習計画を検討する必要があります。

 33年間小学校入試の対策に関わってきた経験から、変化の背景に何があるのかを分析していくと、必ずある原則のようなものがあることに気がつきます。特に合否判定の変化には、学校側の苦悩が垣間見られます。小学校入試がこれほどまでに一般化する以前は、問題も簡単な知能検査が一般的で合否判定においては、関係者が優遇されていたことも事実です。しかし、小学校入試が一般化し受験者も増えた頃から入学試験も全体として子ども本意の実力主義に変わってきました。卒業生であるとか、兄弟が在籍しているとかによって差別されない、公正な試験が行われるようになりました。しかし、今でもごく一部の学校では関係者が合否判定において有利なのではないかと疑わせる状況があることも確かです。私たちは、子どもたちを送り出す側の人間として、子ども本位の合否判定にすべきだと主張してきましたが、こうした私たちの考えに対し、「私立なのだから、伝統を守るために関係者を優遇して当然だ」と考えている人たちも少なからずいることも事実です。

 また、実際に子ども本意の実力主義を貫くばかりに、複数合格して入学を辞退する子が多く、苦労している学校もあります。また、定員を確保するために補欠合格者の出し方を工夫している学校もあります。数年前までは、補欠合格者も正規合格者と同じ日に、受験番号で発表されていたのに、最近では補欠合格は電話連絡や郵送であったり、番号がついていなかったり、A,Bランクであったり、二次補欠のような形を考えたりと、実力主義を貫くばかりに、いろいろ工夫している学校もあるのです。試験日が異なり、複数受験できることから起きる現象ですが、私たちが好ましいと考える実力主義の合否判定も、学校側の立場に立って考えると、解決しなくてはならない問題がたくさんあることも事実です。また、実力主義になったばかりに、学校の教育方針をしっかり理解しないまま入学してしまうケースもあり、校風を守ろうとする学校側が苦心しているという話も良く聞きます。こうした問題が、合否判定の変化の背景にあり、私たちも、受験する子どもの側に立った主張だけでなく、合否判定を変えなくてはならない学校側の苦悩も理解しなくてはならないのかもしれません。

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