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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

入試速報(6) 「言語領域の出題傾向」

第320号 2011/12/16(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 入試問題を分析する視点は、将来の教科学習にどのようにつながっていくかを考えて領域を立てるのが一番わかりやすいはずです。小学校の教科を担当する先生方が作る問題ですから当然です。こぐま会では、未測量・位置表象・数・図形・言語・その他と分けて分析していますが、この方法が問題を分析する視点としては一番すぐれていると思います。認識心理学で使われる用語を当てはめても、実際の問題を正しく反映することはできません。これまで数回にわたり今年出た問題を分析してきましたが、今回は「言語」領域の問題について出題傾向をお伝えします。

小学校以降始まる教科としての「国語」は、4つの柱で学習内容が構成されています。それは、1.聞く力 2.話す力 3.読む力 4.書く力 の4つです。小学校受験で文字を読ませたり書かせたりする問題は、基本的には出されていません。つまり学校側は、「読む力」と「書く力」は小学校入学以降の課題で良いと考えているからです。この点について、ある時学校関係者に「文字を読ませたり書かせたりすることをしないのは何か協定があるのですか」と質問したことがありますが、「それはない」という答えでした。つまり暗黙の了解として、文字を読ませたり書かせたりしないということになっているのです。しかし、最近はその様子が少しずつ変化し始め、文字を読ませて問題を解かせる学校も出てきました。ある学校の推薦入試で次のような問題が出されました。

  • しりとりの空いているところに入る言葉を下から選んでをつける。
    例 : くま - - りんご
       (かさ・まり・とけい)
  • 人の数え方にをつける。
    例 : よんひき・ふたり・さんだい

この程度の文字を読ませる問題ならば何の問題もありませんが、答えを文で書かせたりするような、小学校以降のテスト形式が持ち込まれるとするとこれは大変な事になりますが、そのような事態にはならないと考えて良いと思います。

文字を読ませたり書かせたりしないという前提に立てば、小学校入試の課題は先ほど述べた4つの柱のうち、「聞く力」と「話す力」が中心になるのは当然です。それに幼児期の場合、日本語の理解という視点が大事ですので、こぐま会では「言葉の理解」という項目を立てて授業内容を考えてきました。

聞く力の代表は「話の内容理解」で、これはペーパーテストのあるなしに関係なく、ほとんどの学校で必ず出る課題です。また、話す力の代表は「お話づくり」ですが、最近では理由説明などを通して話す力を点検しようとする学校も増えてきました。この2つの代表的な課題に付け加え、「言葉の理解」に関する問題も最近は結構多く出題されています。その中でも特によく出される課題が「一音一文字」に関する内容です。今年も多くの学校で出されました。

一音一文字
  • ペーパーに「ラッパ、切手、プリン」などがいろいろ書かれていて、その中で「パ、ピ、プ、ペ、ポ」がつくものには、「ッ」がつくものに、両方の物は◎をつける。
  • の描いてあるお部屋(魚・さんま)の絵の最初の音と同じ音で始まるものにをつける。
  • の描いてあるお部屋(にんじん)の絵の最後の音と同じ音で終わるものにをつける。
  • の描いてあるお部屋(すずむし)の絵の3番目の音と同じ音が同じものにをつける。
  • 名前のどこでも良いので、「か」の音がつくものに×をつける。

しりとり
  • 絵に描いてあるもののまん中の音を使って、しりとりでつなげる。
  • 「ラッパ」から始まる。次に続く言葉は3つの絵の中から選ぶ。それがいくつか続いて、最後は「ワンピース」につながる。

「一音一文字」という考え方は、「日本語は一音が一文字を表し、それがいくつか合わさって一つの言葉を形成している」という考え方で、日本語の文字指導の基礎になる考え方です。こぐま会では創立時から、この「一音一文字」は幼児期の基礎教育として大事だと考え、最初からカリキュラムの中に入れてきましたが、その当時は入試には一切出ない課題でした。そのため、「入試に出ない課題だからやらなくて良いのでは・・・」というような意見も保護者からは聞こえてきましたが、私は「入試に出る - 出ないで判断してはまずい。文字指導の基本だから将来必ず出されるはずだ」という考え方を40年間貫いてきました。それが、ここ10年間の入試で「一音一文字」に関する課題が増えていることに驚いています。幼児期の基礎教育に必要な内容は、必ず小学校入試で出されるという予想が見事に当たり、今では言語領域における入試問題の中心にさえなっています。全体として「お話づくり」の課題が減った分、この「一音一文字」に関する入試問題は増えています。「同頭音」「同尾音」「しりとり」に関する問題も、「一音一文字」の応用として把握しておく必要があります。

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