ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

いよいよ入試本番です

第310号 2011/9/30(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 神奈川の私立小学校の面接が始まり、首都圏の入試もいよいよ本番を迎えました。これから12月の筑波大学附属小学校の合格発表まで、入試が続くことになります。さまざまな報道でご存知かと思いますが、私立小学校への志願者はここ2~3年減り続けています。実質の競争倍率も昨年あたりは軒並み大幅にダウンしています。名目上の倍率が4~5倍あっても、実質倍率では3倍近くまで落ち込んだ学校もあるようです。受け入れる学校側も深刻な事態を迎えていることになり、その対策が合否判定のあり方や補欠合格者の発表の仕方にまで影響を及ぼしています。定員割れを起こさないよう、生徒を確実に確保するために、学校側もさまざまな工夫をしています。以前には見られなかった広報宣伝活動にも力を入れ、塾関係者を集めて説明会を行ったり、塾主催の講演会に登壇したり、ネット上のポータルサイトに登場したり・・・と今までは考えられなかった広報活動が見られます。裏返せば、それだけ生徒集めに真剣に取り組まなければならない時代になったということです。だれもが私立小学校を受験する時代から、再び少数精鋭の選抜試験に変わりつつあるということです。名目上の倍率と実質倍率に大きな開きが出る背景には、次のような小学校受験の特殊性も絡んでいるように思います。

  1. 子どもの本試験の前に行う面接試験で日程が重なり、以前は変更可能だったものがほとんど変更できなくなっている。その結果、面接日が重なった場合は1校しか受験できなくなり、スケジュール上では併願できても、実際には受験できなくなるケースが増えてきた

  2. 小学校受験の場合、受験番号の付け方が学校によって異なり、郵送での先着順、月齢順、50音順・・・とさまざまであるため、試験日がずれたりすることにかすかな期待を込めて出願する。その結果、名目上の倍率が跳ね上がる

  3. スケジュール上では同じ日で重なっていても、時間差で受験できる場合も出てくるため、それを期待して出願する。その結果、実際には受けない者の出願が増え、名目上の倍率が上がる。結果として、試験当日相当の空席が目立つということになる

以前は可能だった面接試験日の変更ができなくなった背景の一つには、その学校を第1志望としているのか、併願で受けるのかを、面接の段階でふるい分けしてしまおうという学校側の思惑が見え隠れしています。「合格」の通知を出しても辞退され、補欠合格者を繰り上げ合格としたり、補欠合格者が全員繰り上がってしまい、二次補欠や×からに繰り上げることをしなくても済むように、可能な限り「合格」を出した子に通ってほしいと願う学校側の意図がはっきりとわかります。願書や面接試験が重視されているといわれる背景には、誰が第1志望で、誰が第2・第3志望なのかを見抜こうとする学校側の意図があるからです。受験される皆さんは、小学校受験独特の問題として、この現実をしっかり押さえておかなくてはなりません。都内の学校の願書受け付けが間もなく始まりますが、今年の倍率がどのような結果になるのか注意深く見守りたいと思います。ひょっとしたら、志願者数において「受験戦線異常あり」といった事態が起こりうるかも知れません。ある学校の受験者が極端に多かったり、反対に少なかったりすることにもなりかねません。学校の説明会を聞いて志願する学校を変更しようとしているご家庭も多く、特に女子校の中では、雙葉小学校・聖心女子学院初等科・白百合学園小学校・東京女学館小学校の志願者数の変化に注目したいと思っています。

さて、願書提出に向けて、保護者の方々にとっては今が一番忙しい時期だと思いますが、一方子どもたちにも相当プレッシャーがかかり始めています。直接入試の事を聞かされていなくても、何となく周りの状況の変化でこれまでと違う何かを感じ始めており、その正体がわからない分、子どもたちにとっても相当のプレッシャーになっているはずです。特に模擬テストも終盤を迎え、これまでの結果を見ながら深刻になっている保護者の様子を子どもなりに感じ取っており、時として異常な行動になって表れるケースも見えてきています。突然大きな声で叫んでみたり、お手洗いに10分おきに行ってみたり、サインペンを口紅やマニキュアの代わりにしてみたり・・・・、どこかで発散させてあげなくてはいけないような子どもが多く見受けられます。今年流行ったマルモリ体操のCDを休み時間にかけてあげると、我を忘れたように音楽に合わせて笑顔で踊る子どもたち。その笑顔を見ているとホッとする半面、勉強のやり過ぎや毎日のおけいこの連れまわしで疲れきり、表情をなくしている大勢の子どもたちの心の状態を心配せざるをえません。

残された1カ月の時間を、自信を回復するためにどう活用するか。一番良い状態で入試本番を迎えるためにどうするか。・・・・周りの大人たちがその雰囲気づくりを考えてあげなくてはなりません。「褒めて育てる」基本を忘れずに、気負うことなく自然体で入試本番が迎えられるよう、家庭学習のペースや生活リズムを再度確認してください。体の健康管理はもちろん、心の健康管理がうまくいったご家庭に、きっと良い結果が届くはずです。心の健康を害する原因の多くは人間関係です。特に母子関係、家庭教師や塾の教師との抑圧的な関係に問題が生じやすくなっています。まず「ひとりの人間として、子どもの今を認めてあげる事」・・・自信回復の手立ては、そうした身近な人間関係の中にあるはずです。

PAGE TOP