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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

上海幼児教育視察を終えて

第309号 2011/9/23(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

 9月18日から4日間、上海を訪問して来ました。今回の目的は、

  1. 提携教室の授業の現状を視察する
  2. 上海師範大学の主任教授に面会し、幼児教育を担う人材育成について協力を求める。また研究者と実践者の交流を深め、KUNOメソッドによる大学院生の現場研修と職員の大学での理論研修をお願いする

日曜日の夕方とはいえ、子どもたちを送り迎えする保護者で控室はごった返し、その熱気に圧倒されました。基本的には小学校受験がないにもかかわらず、幼児期の教育にかける上海の親たちは一体何を期待しているのでしょうか。韓国同様、英語教育に対する需要は高いものの、もう一方で、将来の学力の基礎をつくる「思考力の育成」については関心が高いようです。一人っ子政策による子どもへの期待が、幼児期の基礎教育の需要を高めているという側面もあるようです。教室責任者と2~3時間議論しましたが、やはり悩みは日本と全く同じで「優秀な先生の確保」のようです。この点については、韓国でもバングラデシュでも同じです。やはり幼児期の教育は、子どもと接する教師の質が子どもの成長に大きく影響するということです。そのような現状を踏まえ、上海師範大学の主任教授と面会し、いろいろな交流ができるようお願いをしてきたのです。温かく迎えてくれた教授は、私たちの実践活動を高く評価してくれた後、意図的な教育によってピアジェの理論を乗り越えることができるのかどうかと疑問をぶつけてきました。実践のない研究室での議論に限界を感じている教授からは、実践家としての経験をぜひ学生たちに話してほしいとお願いされました。
上海では、韓国同様世界中のプログラムが輸入され、さまざまな形で教室運営がなされています。KUNOメソッドを実践している提携教室も上海に4つあります。高度成長経済に支えられ、今後10年間、教育産業は右肩あがりだと言われています。日本の学習塾や通信教育等もたくさん入り込んでいるようです。しかし、中国の親たちの要求に応えるプログラムは少なく、私たちのメソッドに対する期待が高いようです。主任教授は、いくつかの疑問点を掲げながらも、体を使った経験をさせ、具体物やカードを使った試行錯誤を保障し、最後にワークブックで認識を定着していく授業方法は、世界のどこを見てもないと評価してくれました。
私たちが掲げる「教科前基礎教育」「事物教育」「対話教育」が、韓国においても中国においても評価されているということは、私たちがこれまで実践してきた幼児教育が間違っていなかったということを証明しています。その上で、私たちの母国である日本においても、親の要求に応える受け皿をどう作っていくのか・・・これが、これからの私たちに課せられた使命だと考えています。

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