ページ内を移動するためのリンクです
MENU
ここから本文です
週刊こぐま通信
「室長のコラム」

学習内容の系統性

2005/08/25(Thu)
こぐま会代表  久野 泰可

 先日、あるセミナーで受験を控えた年長児の夏の課題についてお話しました。「難しい過去問」に挑戦することと同時に、「基礎学力が本当に身についているかどうか」をもう一度、夏休みの間にチェックをしていただきたいという趣旨の話を、具体例を示しながらお伝えしました。セミナー終了後、参加された方からいろいろな学習相談を受けました。1日にやるべきペーパーの枚数や論理的思考力が求められる問題の対策法などの質問がありましたが、ある方からこんな相談を受けました。

 『基礎学力の点検をしなくてはいけないことは良くわかるが、何が基礎で、何が応用かが母親である私にわからないので、基礎学力を点検する良い教材を教えてもらえないか』

 会員の皆さんには、夏休みの家庭用教材として、「基礎学力点検ボード」を配布しました。それを使って学習し、答えの根拠を説明させることを通して、本当に理解しているかどうかを点検する教材です。この点検ボードは公開していませんので、相談された外部の方には、それに代わるものを紹介しました。お話を伺うと、「過去問を中心に1年以上ペーパートレーニングしてきたので、難しい問題も結構点が取れるが、最近、易しい問題で点を落とすことが目立ってきた」ということでした。学習当初から、過去問中心に個人の先生について学習してきたので、ある問題がわからないとき、どこまで戻って学習を積み上げていったらいいのかが、わからないというのです。その後、同じような趣旨のご相談を数人の方から受けました。こうした、相談を通してわかったことは、『学習の系統性』を踏まえない、受験対策がかなり横行しているということです。入試本番までにできれば良い課題を、1年前から学習課題に掲げ、過去問のトレーニングが入試対策と考えている指導者や、保護者があまりにも多いことに驚いています。到達すべき課題(入試問題)を最初から学習して、どうして子どもたちが理解するのでしょう。教え込みはできたとしても、子ども自身が本当に理解できたかどうかは別問題です。本当に理解できたということは、『なぜそうなるの』という質問に、子どもなりにきちんと説明できるということです。1年前の子どもに、そんなことはできません。だからこそ、基礎から応用へ・具体から抽象へといった積み上げが必要なのです。子どもの思考力は、体や精神の発達と同じように、発達の原則があります。それを無視したトレーニングでは、パターン練習はできても、論理の学習はできません。

 入試対策といえども、指導の原則はあります。それは、子どもの発達に見合った教育内容であるかどうかということと、学習内容の系統性をふまえた指導であるかどうかということです。何が基礎で、何が応用かを保護者のみならず、指導する教師がわかっていないとしたら、これは、指導される子どもにとって、悲劇以外の何ものでもありません。

PAGE TOP