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週刊こぐま通信
「室長のコラム」

これから子どもに起こること

第163号 2008/08/29(Fri)
こぐま会代表  久野 泰可

首都圏の本試験まで、残り2か月足らずとなりました。願書提出やそれに続く面談等、9月から10月初めにかけては、子どもより保護者のほうが忙しくなります。家庭学習もややおろそかになりがちですが、時間の確保はしっかりお願いします。これまでと変わらないリズムで学習し続けることが大事です。今年も8月に入ってから、いろいろな相談を受けています。その一つは、学校選択についてであり、もうひとつは学習の方法についてです。それは、今年に限ったことではありません。毎年この時期になるときまって相談をうける内容です。その内容は以下のようなものです。

A. 学習意欲がなくなった
B. 以前できていた問題ができなくなってしまった
C. 難しい問題はできるのに、易しい基本の問題で間違えてしまう
D. ペーパーはほとんどできるのに、個別テストになると点が取れない
E. 家でできるものが模擬テストになると得点できない
F. 答えは合っているのに、「なぜ」という質問に的確に答えられない

それぞれに個別な理由はありますが、大きな原因として次のように受け止めておく必要があります。

  1. 夏休みの難問トレーニングで自信をなくしていないかどうか
  2. 勉強だけの生活の連続で、学習することに興味をなくしていないかどうか
  3. 解き方の教え込みで理解していたため、自分で考え、解く習慣が身についていないのではないか
  4. これまでできていたというが、本当に理解していたのかどうか

つまり、これまでの学習の仕方に問題があったとまず考えるべきです。その上で、これから本番までどうするかについては、もう一度基本に戻り、自分の力で問題を解き、考え方や解き方を自分の言葉で説明させることです。上記質問のB・C・D・Fについてはそうしたまとめの仕方で解決できるはずです。夏休みを過ぎた今、これまでに相当難しい問題も学習し、いろいろなタイプの問題に触れていると思います。その結果、

  • 問題を見ただけで、どんな問題かを予想できてしまう
  • 易しい問題に接すると、こんなに易しくてよいのかと子どもなりに自問自答してしまい、問題をかえって難しく考えすぎてしまう

などの問題が生じます。ですから、少し混乱している問題を、基本問題を通して整理してあげることです。そのまとめの学習を、9月半ばから直前まですべきです。こぐま会では「毎日トレーニング」と称して、日付をふった問題集を8月から10月まで家庭学習用に準備し、1日4枚の基礎トレーニングでまとめをするようにお願いしていますが、このように難問トレーニングを行う一方で、基本問題を確実にこなす練習もしておかなくてはなりません。本当に理解していれば、難しい問題ができて、易しい問題や具体物を使った個別テストができないはずはありませんから、そうした逆転した現象は、これまでの勉強の方法に問題があり、本当に理解していなかったと考えるべきです。これからでも遅くありませんから、理由説明を常に求める「対話教育」を実践してください。

さて、これから子どもに起こる問題で、気をつけておかなくてはならないことが、2点あります。それは、

  1. 学習を拒絶したり、チック症状が見られるようになる
  2. 問題ができなかったりすると、パニック状態になり、泣き出したり、次の問題を拒絶したりするようになる

この2点がこれから子どもに起こる問題の中で、一番深刻な問題です。チック症状が見られたり、これまでなかった夜尿が始まったり、頻繁にトイレに行くような子は、相当プレッシャーがかかっている証拠です。多くの場合「母子関係」に問題が生じている結果の現れですから、母親が「怖い先生役」を演じないようにしてください。そうした症状が見られた場合、スキンシップが一番有効ですので、いろいろ工夫してみてください。 もう一つの問題である、パニック症状は、どちらかというと勉強が良くできる優秀な子に見られます。テスト形式でペーパーをやっているとき、「やめ」といわれて全部できていなかったりすると、急に泣き出したりしてしまうのです。普段完璧にできている子ほど起こりやすい現象です。つまり、「できない」という現実を受け入れられないのです。実際の本試験でも、ある問題ができなかったりすると動揺して、次の設問が平常心で聞けなかったり、手がつけられなかったりする場合がこれまでもたくさんありました。このようなことがないよう、私たちは意図的にできない状況を作り出し、「問題が難しかったリ、時間が短かったりする場合はできないこともある」ということを、事前に知らせておくのです。「でもね。大事なことは最後まで一生懸命やることと、次の問題をしっかり聞いてがんばること。」と伝えるのです。こうしたトレーニングの結果、できなかった現実を受け止め、気持ちの上でも乗り越えていけるのです。模擬テストにおいて、家庭学習で解っていても点が取れないひとつの原因は、家庭においてひとりで学習している時と、集団でテストを受けている時とでは、心理的要因が全く違うということです。個別学習を徹底し、集団で学習する機会が少ない子におこりやすい現象です。本番での試験は集団で行うわけですから、受験のための教育は、まず集団学習を基本とすべきです。

せっかくこれまで、長い時間をかけて準備してきたのに、この入試直前になって、問題を抱えるようでは本当に辛いと思います。「受験だから・・・」といって、教育の原則を逸脱し、特別な方法で準備してきた子の多くが、この時期に問題を抱えやすいのです。受験準備に特別な方法はありません。まともな考え方で最後まで取り組み、自信をつけ精神的に落ち着いた一番良い状態で本試験を迎えられるよう準備してください。

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